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悩んだときに基本に返ると、実は自分が答えを知っていたことに気づく

2020-06-05

悩んだときに基本に返ると、実は自分が答えを知っていたことに気づく

取組むテーマが複雑化してくると、基本を忘れてしまいがち

コンサルティングという仕事をしていてクライアントから依頼を受けるテーマは多様だ。全く同じテーマというものは存在しない。そして、クライアントはより複雑な課題についてコンサルタントを活用する。

先日、あるクライアントから頂いた仕事もユニークなものだった。私は個別の論点から着手しようとしたのだが、どうも話が細かい部分にいってしまい全体像が見えてこない。一方、私の上司が、頂いたお題に対して、まずは資料の骨子を文章のみで書ききった。それによって、全体のストーリーが見え、個別の細かい議論を避け、全体として筋が通るか、資料の読み手に納得してもらえるか、をクライアントにもフィードバックをもらうことができた。

その鮮やかな仕事捌きを目の当たりにした数日後、私は数年前に自分で作ったドキュメンテーション研修資料を更新しようとした。すると、そこには、「まずは全体のストーリーを箇条書きにせよ」と書かれていたのだ。

世の中には、テーマが何であれ通じる基本の「型」が存在すると気付かされた瞬間だった。定期的に基本の型を振り返る必要性を感じた。

M&Aにも立ち返る拠り所が必要

実はM&Aでも同じことが言えるのではないだろうか。M&Aにおいても、一つとして同じ案件はない。しかし、M&Aにおいても、どの案件にも通じる「基本」があるように感じる。たとえば、マジョリティ出資でも、マイノリティ出資でも、「M&Aの目的は最重要であり、骨太かつ具体的にすべき」である。また、プレM&Aの案件検討者とPMI実行責任者が異なると情報断絶が起き、失敗しがち、という教訓も最近ではよく言われるようになってきた。

しかし、上記を頭でわかっていても、実際にディールが始まってしまうと、見失ってしまうことも多い。特に、M&Aの経験やノウハウが属人化し、明文化されていない企業が多く、立ち返る「基本となる型」がないのも実際ではないだろうか。昨今では、過去のM&Aの振り返りや、M&Aの型づくり、といったテーマのご依頼も増えてきた。あるクライアントのM&Aの型作りをご支援させて頂いた際に、担当役員の方から「拠り所になるものを作ってくれた」という言葉を頂いた。M&Aの型をつくる効用は以下がある。

<検討準備>
– M&Aを検討する際に、事前に、いつ何を検討・準備しておくべきなのか、備えることができる

<検討中>
– M&AやPMIのプロセスの中で迷った際の拠り所となる
– 検討に抜け漏れがないかチェックできる
– 自社の陥りやすい罠にはまっていないかをセルフチェックできる

<検討・実行後>
– 型に照らして、自分たちの活動を振り返ることで、改善点や良かった点が明確になり、M&A力の向上につながる

「M&Aの型」を作るには「自社の癖」を加味する

MAVISでは、過去の経験・知見をもとに、一般的なM&A戦略立案~ディール~PMIの型(プロセス、活動内容、判断基準など)を明文化しているが、その基本型をもとに、クライアントの「癖」をエッセンスとして加えることが重要だ。なぜなら、M&Aのプロセスや意思決定の仕方などは、その会社の企業文化が色濃く反映される。ある企業では、定期的に過去M&Aの振り返りを実施していたが、中々その振り返り結果が生かされていない部分があった。そこで複数案件の振り返りの中で、案件共通の自社の癖を抽出し、それらを克服するための「十戒」を明文化し、それを国内外の役員間で共通認識とすることとしている。

M&Aを実行してから、PMIを一通り終えてから、「あーそういえば自分知ってたじゃないか!」と悔いる前に、M&Aにおいても、「自社の基本」を明文化し、適宜振り返る習慣を作ってみてはいかがだろうか。

MAVIS PARTNERS マネージャー 井上舞香

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