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M&Aに限らず、企画立案者と実行者が変わると引継ぎが難儀

2020-07-03

M&Aに限らず、企画立案者と実行者が変わると引継ぎが難儀

引継ぎで2か月をロス

「前任者の意図を汲んで欲しい」、「当初の企画をひっくり返されるんじゃないか」
「昨年度の検証結果が全然見えない」、「本当にこの設備が必要なのか?」

上段が企画立案をした“引き継ぐ側”、下段が実行を担う“引継ぎを受ける側”のそれぞれの意見だ。
私が携わったこの案件は、直接M&Aに関わるものではない。

あるテーマについて、前年度企画立案したものを、今年度実行に移すという過渡期の中で、私はPMOとして上手く橋渡しを行い、プロジェクトを立ち上げるのが役目だった。
しかし、前任者から企画立案段階の様々な想いや考えを聞き、後任者の意見も個別で聞き、前任者と後任者を引き合わせ、プロジェクト設計の認識を合わせて・・・とやっているうちに、キックオフに至るまでにはあっという間に2か月が経ってしまった。

ただし、ここをないがしろにしてしまえば、プロジェクトが進むにつれ、前任者と後任者のズレが大きくなり、当初思い描いていたものと全く違うものができあがってしまうか、最悪の場合、企画自体が立ち消えになってしまう。

一方、もし企画立案と実行のオーナーとリーダーが同一人物だったら、ここで2か月もロスせずに済んだのに、という想いも同時に生じた。
「産みの親」と「育ての親」が違うと、こんなにも難儀なのかと改めて実感した。できることなら、企画立案と実行の間での担当者交代は避けたいものだ。

なぜ企画立案者と実行者が変わってしまうのか?

M&Aでも、「M&Aのプレとポストの責任者は一気通貫であるべし」と言われることが多くなってきた。しかし、依然として、M&Aにおいて企画立案者と実行者は変わりがちだ。それはなぜなのだろうか。

M&Aで企画立案者と実行者が変わらざるを得ないケースとしては、以下2つがあると考えられる。
・日本企業特有の定期人事異動により、企画立案者が異動し、M&A担当から外れてしまう
M&Aにおける戦略立案・ディール~クロージングまでの業務は特殊業務であるがゆえに、担える人が少なく、そういった人財をPMIまで送り込んでしまうと企画立案できる人財がいなくなってしまう(したがって、実行は現場に任せざるを得なくなる)

ある企業では、定期人事異動によりM&A責任者が変わってしまうケースが散見された。そうなると、後任者は事業計画を達成できなくても、前任者が作ったものだと欠陥を指摘し、責任逃れができてしまう。明らかに、コミット度合が異なるのだ。そこで、同社は、M&A責任者はプレからポストまで一気通貫で担うとする方針を立て、場合によっては定期人事よりもM&A人事を優先させることを社内の共通認識として持たせた。

また、後者では、特殊業務の部分はM&A専任部署がサポートしたり、外部を活用したりすることで補い、事業部門責任者がプレM&Aからポストまで一気通貫でオーナーとなることで、継続性を担保している企業もある。事業部門側に、企画立案から権限委譲するケースも最近では見られてきたが、その一環でもあるかもしれない。

それでも変わってしまうならば、“想い”の引継ぎを忘れずに

前述の案件では、実行段階での体制を、企画検証フェーズが終わった後に考え始めた。だから、実行段階フェーズの主要メンバーを企画段階から巻き込むこともできていなかった。それによって、企画⇒実行の間をシームレスに進めることができなかったのだ。M&Aで言えば、PMI体制をクロージング後に考え始めたようなものだった。従って、担当者変更が予め分かっているなら、後任者を早期に巻き込んでおくことが肝要だ。

それでも突然変わってしまうのならば、やはり丁寧に引継ぎをするしかないだろう。その時に大事なのは、事務的な引継ぎだけではなく、なぜこの企画を立案したのか、なぜこのM&Aが必要だと思ったのか、という“産みの親”としての想いを共有することが大事なのではないだろうか。何事も、企画立案者と実行者が変わるときには、気を付けて頂きたい。

MAVIS PARTNERS マネージャー 井上舞香

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