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説得力を生み出すには?

2023-06-23

説得力を生み出すには?

ラップスタア誕生で知ったラップの奥深さ

みなさんはAbemaの「ラップスタア誕生」という番組を知っているだろうか?全くの無名ラッパーから界隈では名前の知られ始めているラッパーなど様々な経歴のラッパーが、賞金300万円と“ラップスタア”の称号の獲得を争うオーディション番組だ。2017年から年に1回程度の頻度で開催していて、年々参加者が増えており、先日終了した2023年シーズンでは3400名くらいが参加した一大イベントになっている。
このオーディション番組で活躍したラッパーは、優勝せずとも名前が売れて、この番組きっかけで各地のイベントに呼ばれ始めたり、音源が流行りだしたりとまさに若手の登竜門になっている。私自身、もともとラップが好きだったわけでもなんでもないのだが、何となく見始めたところ、ラップスタアを目指すラッパーたちの熱量や、ラップ自体の奥深さにハマり、毎週土曜日の放映を楽しみにしていた。
ラップを全く知らない人のために、誤解を恐れずものすごくわかりやすく説明すると、ラップとは、同じ母音の言葉を並べて文章を構成し、それを音に乗せていく言葉遊びの要素のある音楽ジャンルである。
例えば、

今日のご飯は炊き立て
これが母の愛だね
でも毎日カレーは飽きたぜ
たまには食べたい牡蠣鍋

という文章の、炊き立て/愛だね/飽きたぜ/牡蠣鍋の4単語は母音がどれも「a-i-a-e」になっている。このように同じ母音の単語をつないでいくことを「韻を踏む」と言うらしく、母音がそろっている単語を並べて意味も通っていて耳あたりのよい文章を、音に気持ちよく乗せられると観客はめちゃくちゃ盛り上がる。

ラップが生み出す不思議な説得力

ラップスタア誕生を見て、「韻を踏む」というラップの技術的な面白さにも興味を持ったのだが、韻を踏むことで不思議と説得力が増しているように感じ、実際記憶に残りやすくなる点にも興味を持った。
例えば、あるラッパーが制作したラップの中で、自分の過去の境遇を歌った箇所があるのだが、

はじめは金ない外人貧乏
その代わりに夢を見れてBingo!
ランドセルすらもお下がりShit!
周りの奴らにしてたよ嫉妬
ママの給料は手取りで10万
でも真っ赤な愛で心 充満
待ってた この時 この順番
でも待ってるだけじゃ来ない順番

(ラップスタア誕生 2023 ShowyVICTOR GENZAI)

という歌詞がある。彼がどのような境遇で生まれ育ったかが具体的に理解できるし、このラップスタアという番組にどれだけ賭けているのかも説得力を持って理解できる。何となくこのラッパーに好感を持つし、応援したくなる。番組を見ていて、「韻」のパワーに不思議な気持ちになった。

ラップの技法は仕事に活かせるか?

ラップスタアを見てから少し調べてみると、「韻を踏む」という技法は俳句や詩でも使用されてきた古くからあるテクニックの一つで、現代でもコピーライティングの世界では、記憶に残りやすいコピーを考える上で意識されているスキルの一つらしい。言われてみれば確かに、「セブンイレブン、いい気分」も韻を踏んでいる。韻を踏む芸人もいる。歴史のあるテクニックとは知らなかった。
コンサルは「ロジック」を使って説得力を生み出している一方で、ラッパーたちは「韻を踏む」ことによって言葉にリズムを生み出し、記憶に残りやすく説得力のある文章を生み出している。アプローチは違うが、言葉を大切にする姿勢や言葉を使って人を説得させる点においては、コンサルという仕事と近しいものを感じ、自分の仕事にも活かせないかなと感じる部分もあった。
もちろん、やってみようと思ってすぐにできるほど甘くはないと思うし、韻を踏むことがコンサルのプレゼンテーションにおいて良いとも言い切れないが、「ロジック」だけではなく、文章全体のリズムや記憶に残りやすいキラーフレーズを用意しておき、プレゼン時に“刺しに行く“という意識は持っておきたいと思った。
“言っていることは確かに正しいけれどもロジックだけの平坦な文章“にならないよう、ロジカルさがありメリハリもあり、リズミカルで記憶に残りやすいアウトプットを意識していきたい。

MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太

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