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ただ仕事を任せるだけでは責任放棄 ~仕事の任せ方に学ぶ子会社ガバナンスで気を付ける点~

2020-10-23

PJを進行する中で気づいた「ガバナンス」の難しさ

我々はM&Aコンサルタントとして、買収後の子会社のガバナンス設計をご支援することがある。買収後の子会社ガバナンスに関してクライアントから聞くことが多い課題としては、「決算報告や決裁権限など必要最低限のルールは設けているものの、経営に関しては任せておりガバナンスが効いているとは言い難い」というものである。
もちろん親会社子会社それぞれの実力や、同業種に対する買収か異業種に対する買収であるかなどによって、ガバナンスの方針は異なるので“任せる方針”自体が間違いとは言い難い。しかし、子会社に任せる場合であっても、「親会社やグループとしてのビジョンや、そもそもの買収目的に対して共通認識を持つべきだ」など、コンサルタントとしての正論をお伝えすることが多い。
しかし先日、PJを進行する上で部下やチームのスタッフに仕事を上手く任せることが出来なかった経験から、「ガバナンス」の難しさを痛感した出来事があった。
卑近な例だが、本日は上記の経験から、子会社ガバナンスにおいても活かせると思われる気付きをご紹介したい。

「説明責任」がある一方、「質問責任」もある

部下やチームスタッフに仕事を任せる際に、目的や期待する成果物を伝えた上で仕事を任せているつもりであったが、どうにも期待していたアウトプットが出てこない。そのため細かいやり方まで指示を出してしまい、結局任された側のモチベーション低下を招いてしまった。この時に気づいたのは、仕事を任せる側として「説明責任」があるのと同時に、任される側は不明点や疑問を質問する「質問責任」があるということだ。そして、仕事を任せる側はその質問責任を果たせる機会を用意すべきである。
子会社ガバナンスにおいて、「子会社にある程度経営を任せるとしても、買収目的や買収後のビジョンについて示し、子会社に期待する役割は明確に伝えるべきであり、そのために、買収前にも買収後にも双方の経営陣が話し合う場を設けるべきである」ということをお伝えすることがあるが、親会社側からの一方的な説明の場になってしまっては、「説明はされたが理解は出来ない」という状態に陥ってしまうこともあり得る。親会社としての「説明責任」を果たすということだけでなく、子会社からも「質問責任」を果たす必要があるし、親会社としては、子会社が質問しやすくする工夫が重要だろう。

結果だけではなくあらゆるプロセスを透明化し、情報公開を行う

我々のPJでは、PJの初期に全体のストーリー(いわゆる仮説)を書ききってしまい、PJの中でその仮説を検証していくというアプローチをとることが多い。その際全体のストーリーを考えるのは主にPJマネージャーの役割で、チームメンバーはその全体のストーリーの中のまとまり(ストリームと呼ぶ)ごとに仮説検証とブラッシュアップを担当する。その際に、PJメンバーと全体のストーリーの結果だけの共有に留まり、なぜそのストーリーになったのかといった背景や判断の根拠も示さなかったために、各メンバーの理解が浅いまま仮説の検証が進み、精度の高い仮説検証にならないことがあった。この場合、部下やチームスタッフが前述の「質問責任」を果たすためにも、しっかりと思考プロセスまで示す必要があったのだろう。
親会社と子会社がコミュニケーションをとる上でも同様に、経営戦略が決まる意思決定プロセスを公開して、どんな背景やどんな判断で意思決定がなされたのかが分かる状態にしておけば、双方の理解度も深められ、計画実行の精度も高くなるだろう。ある会社では、秘匿性の高いごく一部のことを除いて、ほとんどを子会社に公開している会社も存在している。

子会社ガバナンスの肝は共通認識を持つことに変わりはないのだが、共通認識を持つためには親会社としての一方的な「結果の説明」にならないよう、「プロセスも開示しつつ、子会社からの質問に答える仕組み」を作ることが重要ではないだろうか。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 渡邊悠太

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