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自前主義からの脱却

2020-09-25

自前主義からの脱却

全部自分でやらない方が仕事の質は上がる

「なにをしないのかを決めることは、何をするのかを決めることと同じくらい大事だ」

上記のセリフは、スティーブ・ジョブズの名言であり、だれしも一度くらいは耳にしたことがあるだろう。

一言でいえば「時間を大切にしよう」と言っているのだが、スティーブ・ジョブズはそのためのアプローチとして、「自分がやらないことをリストアップしよう」と言ったのだ。自分がやるべきことをリストアップすることはあっても、その逆にしないことのリストアップを実践したことがある人はどれだけいるだろうか。少なくとも私はやらないことのリストアップをしたことは無かったのだが、自分がやることとやらないことの線引きは明確にした方がいいと実感した出来事があった。

 

もともと私は、任された仕事は何から何まで自分一人でやり切ることが理想だと思っている。それに加えて誰かに何か相談して指図をされることもあまり好きではないため、一人で仕事を抱えがちな傾向にある。

もちろんPJや仕事上必要な議論は行うのだが、もっと早めにチームで議論した方が効率的だったと反省することも少なくない。それでも、基本的には自力でやり切るという姿勢を崩そうとは思わなかった。

しかし先日、複数PJで会議が重なったことに加えてPJ以外の業務の期日も迫り、ついに自分一人では時間的に捌ききれなくなった。そこで、ある分野は自分が担当しない、自分が担当する分野の仕事についてもリサーチなどは極力自分ではやらない、と決めたのだ。

すると、必然的に自分がやらなければならないことが明確になり、結果的にクライアントにも評価していただけるものが仕上がった。

自分がやるべき仕事は状況次第で変わり得るので都度見直しが必要

この時には、クライアントが興味・関心のあるポイントは何か?そしてその中でも自分が価値を出さなければならないものはどれか?という2軸を意識して自分がやるべき業務と、自分がやらなくてもよい業務(やらないとは言っても成果物に責任は持つので、成果物のイメージは持った上で人に任せる)を選り分けた。

今回行った評価方法が絶対的に正しいというわけではないと思うが、クライアントの興味関心が高く、自分が価値を出すべき業務を絞り込んだことは結果的に良かったと思っている。見極めを誤ると、クライアントの関心の低い事柄でも自分が価値を出せる、得意だからと無駄に頑張ってしまうこともあり得るし、逆にクライアントの関心が高いポイントであっても自分の価値が出しにくい分野を自力でやり切ることに固執してしまい、余計な時間を割いてしまいかねないからだ。

評価方法は様々なやり方があると思うが、今回気づいた重要なポイントは、周りの状況に応じて自分がやるべき業務は変わるので、都度見直さなければならないということだ。上記の例でいえば、PJ中の議論や環境次第でクライアントの興味・関心時は変わる。だからこそ、一度自分がやるべき業務だと判断したものであっても、状況次第で他人に任せた方が良いこともあり得るし、任せられるように準備しておくことが理想的なのだろうと理解した。

会社としてやるべき業務も都度見直しが必要だろう

考えてみればこれは会社経営でも当てはまる。以前流行ったシェアードサービス子会社を設立し、本社機能を再定義するという考え方は、まさにやらない業務の見極めの際たる例だろう。また、HD化にしても同様に本社機能の再定義という意味でやらない業務の見極めといえる。また、最近では自社でやらない事業を定め、その事業が儲かる場合でも積極的に売却を検討する企業も増えてきている。社内でなかなか提案できない事業売却を進めるために、あるべき事業ポートフォリオを提言する役割を社外取締役に担ってもらうといった先進的な取締役会の活用例も存在する。

どのケースでも大事なことは、先ほどと同じく、周りの環境(事業環境や戦略)によって、やるべき業務は変わり得るので都度見直さなければならないということだろう。

 

実は、冒頭のスティーブ・ジョブズの名言には続きがある。

「なにをしないのかを決めるのは、なにをするのかを決めるのと同じくらい大事だ。会社についてもそうだし、製品についてもそうだ。」

自分自身の業務だけではなく、会社としてやらない事業や、製品として不要な機能をそぎ落とす、という考えは言うは易しだが、是非とも意識していきたい観点である。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 渡邊悠太

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