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確証バイアスに囚われずに意思決定を~ユリウス・カエサルに学ぶ~

2020-12-25

ローマ帝国の昔からあったバイアスの問題

ある休日、コラム原稿を行きつけの美容室で考えていた。すると、馴染みの美容師が、原稿のテーマを増やすのに協力しようとしてくれて、「固定概念を外すと、どうなるんでしょうかね?」と聞いてきた。とっさに、「情報がたくさん入ってくる」と答えた。この美容師と話をすると、営業や社員教育、世の中のトレンドなどの話題が出て、外見だけでなく、発想もリフレッシュされる。瞬発的に出て来た答えだった。なぜ、私はこの言葉を口にしたのだろうと、答えた後に考えた。私は、「バイアス」を念頭に答えたのだった。「確証バイアス」と呼ばれるものがある。人は、自分の先入観や仮説に合った情報だけを求めようとする。塩野七生氏の「ローマ人の物語」を10年以上前に全巻読んだ。歴代のローマ帝国の善帝、悪帝の行った執政から得られる教訓が述べられており、私はそれら教訓を公私における指針としていて、大きな影響を受けている。この中で、ユリウス・カエサルが「ガリア戦記」に書いた言葉、「人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人たちは、見たいと欲する現実しか見ていない」が引用されている。これは確証バイアスのことを述べている。私は物事を判断するとき、この言葉を思い出して自分に問うようにしている。

人の脳の働き

人間の脳は節約して使う機能になっているそうで、人はバイアスのある何らかのフレームを持っていて、無意識にそのフレームに基づいて意思決定を行う傾向にある。フレームは考慮すべき情報とそうでない情報とを選り分ける。人は、ひとたび仮説を持ち、それを否定する情報が出て来たときに、「認知的不協和」という自己の認知体系の整合性が取れない状態になり、不快感を持つ。この不快感を避けるために、不都合な情報を無視したり、都合のいいように解釈したりする。ITが発達した昨今、情報はたくさん溢れているが、確証バイアスの働きがあり、無意識に人の脳には際限なく情報が入ってこないようになっている。この確証バイアスが正しければ問題は起きないが、正しくないのに、入ってくる情報を無視してしまうと、立てた仮説は修正されることなく、人は誤った意思決定を下してしまう。意思決定をする際には、ユリウス・カエサルの言葉を意識してほしい。

戦略を立てるプロセス

ところで、我々コンサルタントは、戦略を考える時に、先ず仮説を立てる。その仮説に基づき、調査・分析を進めながら、仮説を修正していき、戦略を立てる。コンサルタントは、仮説は当然に修正されていくべきものであると認識している。むしろ仮説なく、闇雲に調査すると、途方もない作業になってしまうし、光をなかなか見つけることができない。間違っている前提で戦略の仮説を構築し、その仮説に基づいて調査を進める方針を決め、調査で判明してくるファクトで軌道修正しながら、戦略を作っていくのである。このため、最初に仮説を頭に置いていること自体は、よいことなのである。なお、最初に立てる仮説は直観に基づいていることが多い。東京都立大学・経済経営学部、長瀬勝彦教授は、「その人の経験に基づいた意思決定が直観とも言えるので、あながち馬鹿にできない。ただ、直観で選んだものがすべて正しいというわけでもなく、経験から学んだつもりが、変な学び方をしていることも多々ある。人間の意思決定に、『直観』と『分析』があるとしたら片方だけを信用するのではなくて、両方をある程度組み合わせるべきだと思う。」(「勉強の夏、ゲームの夏。2018」、ほぼ日刊イトイ新聞)と述べている。経験に基づき仮説を立てる。しかし、仮説にこだわることなく、仮説を肯定、否定する情報を集め、それらに基づき仮説を修正していき、意思決定を下す。この手法がベストである。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 竹森久美子

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