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何かを人に受け入れてもらうには、その人にとって“慣れ親しんだもの”にする仕掛けが重要

2021-04-23

人は慣れたものを好きになる

ある文章や発言が本当だということを、どうやって判断しているだろうか?あるいは、部下からの提案が正しそう、実行してみてもよさそうだ評価する場合、何を根拠に判断しているだろうか?多くの人が、論理的な正しさや経済的な合理性などを理由に挙げるかもしれないが、実はそれだけではない。というより、論理性や合理性以外の部分が判断に影響することが非常に多いらしい。人は慣れ親しんだものや、好感を抱いている人からの発言を無意識に“正しい”と思いこむ傾向にある。
先日、とあるプロジェクトでこんなことがあった。
プロジェクトの初回mtgで「最終的な結論はこうなるんじゃないか」という着地を見せたところ、「さすがにそれは言い過ぎ」と半ば冗談のように受け取られた反応が返ってきた。しかし会議を重ねるごとに、「確かにそれも一理あるかもしれない」とか、「もしその結論が正しいのであれば、こういう方法もあるかもしれない」といった前向きな意見が聞かれるようになったのである。
我々の提言の論理的な正しさがやっと伝わったのではなく、何度も繰り返し発言していたことで、クライアントが“慣れてきた”のではないかと思う。“慣れたものを好きになる”という人の傾向を認知容易性というらしい。

“認知容易性“によって無意識に行動や選択が左右される

認知容易性というのは、簡単に言えば「見たことがある、聞いたことがある、繰り返し経験したことがある、なじみがある、すぐにわかる」ものに対し、「心地よさや親しみやすさ、好意、安心感」を抱きやすいということだ。
人の認知容易性を表す効果の一つに「単純接触効果」というものがある。これは耳にしたことがある人も多いと思うが、接触回数が多いほど親しみが生まれ、好意を抱きやすいというものである。私自身、野村證券1年目で営業だった時に先輩社員から「2時間の商談を1回するよりも、5分の会話を24日(合計2時間)続ける方が、営業の決定率が上がるから、繰り返し訪問しろ!」というようなことを言われた。そして、実際に何度も通った方が営業の成約率は高いのである。これは何度も通う営業マン自体に親しみを抱き、発言が受け入れられやすくなったということも大きいのだと思う。(もちろんそれだけではない)
また、認知容易性を表す例として、同じ内容であっても文章で書くより格言風に書いた方が正しいことを言っていると感じる人が増えるとか、上場後1週間は、覚えやすい名前の会社の株価が上がりやすい、といった例が報告されているらしい。
ここで大事なのは、“認知しやすさ”というのは意識して作り出すことができ、それによって他人の行動や選択を多少なりともコントロールすることが出来るということである。

認知容易性を高めるには、ただ単純に時間をかければよいのではない

一方、逆もまた然りで、認知しづらければ正しいことを言っても受け入れられにくくなってしまう。例えば、フォントが読みにくいという理由で企画を却下されるとか、専門用語が多く難解だから提言が受け入れられないということはごく普通に起こる。どんなに正しいことを言っても、1回目ではなかなか受け入れられない。これは全て「正しくないから」ではなく、「馴染みがないから」ということも大きく影響している。
同じように馴染みがないから受け入れられないという事例の一つが、M&A後の企業文化の問題でもあるのではないだろうか。どちらが正しいとか正しくないではなく、「弊社ではこれまでそのやり方ではなかったから」という理由で統合が上手くいかないというのは良くある話だ。認知容易性という人の特徴を踏まえると、時間をかけて自社の企業文化を“理解させる“とか”浸透させる“といった発想の取り組みは上手くいかず、相手企業にとって”認識しやすいものにする“とか”馴染みやすい表現に変える“といった工夫が重要なのであろう。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 渡邊悠太

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