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M&Aにおいて相手を知りたければ、商品・サービスの理解に努めよ

2020-09-18

自社語りで企業文化を感じる

経営コンサルタントという職業柄、業界問わず、様々な企業に訪問する機会が多い。事前にその企業の下調べをして、「こういうことに困っているのではないかな」と想像をめぐらし、意見交換の準備を行う。ただ、当日、意見交換をしていると、いくら下調べをしているとはいえ、業界特有の事情など、知らないことも出てくる。そういう時は、素直に知らないから教えて欲しいと伝えて、勉強させてもらうしかない。コンサルタントは知識ではなく考え方で勝負しているのだから、情報ギャップはさっさと解消して同じ土俵で議論できるようになった方が互いにメリットがある。

私は、その「知らないこと」を教えてもらうとき、その会社の企業文化を最もよく感じる。その人の仕事や会社に対する考え方や姿勢、価値観が溢れ出てくる。そして、時間も忘れて楽しそうに話してくださる人もいれば、とても理路整然としているけれども、どこか評論家的に客観視しながら、端的に“説明”してくださる人もいる。もちろん、その人の個性も要因としてあると思うが、自社についての語りには、その企業の文化が垣間見える。

企業文化と商品・サービスの関係性

M&Aコンサルティングを仕事にしている以上、その“企業文化”というものについて思考することは多い。買収企業と被買収企業の企業文化の違いは是正するべきか、それとも「尊重」という名の下で違いは残すべきなのか。M&Aコンサルティングにとって、企業文化は切っても切り離せない代物だ。時として、プロジェクトの中で、クライアントの社史を紐解き、創立の時代背景から、企業文化を同定することもある。「社史まで使うのですか?」と驚かれることもあるが、それほど企業文化を正しく理解することは大事なのだ。企業文化の見極めや相性なくして、M&Aの成功は難しい。

では、企業文化は、どうすれば理解できるのか?「人材→企業文化→商品・サービス」という構図で、新規事業やイノベーションを起こせる企業文化や人材について議論や研究されることは多いし、もちろんそういった面はあると思う。しかし、逆に、「商品・サービス→企業文化→人材」という関係性もあるのではないか。「自分たちは、こういう商品・サービスを提供している」という理解が、「自分たちは、こういう考えや想いを持っている」という再確認となり、企業文化という捉えどころの無いものの輪郭を定義しているように思う。

例えば、金融サービスを提供している企業と、職人が手作業でものづくりに励む企業を比較すれば、企業文化は異なるのは、誰の目でも明らかだ。それは、そこにいる人材の行動パターンが企業文化を醸成しているという意味で、人材の違いが要因として挙がるのは当然だが、逆に、扱っている商材の違いによっても、企業文化は規定されて、それが人材の価値観に影響を与えている面もあると思うのだ。

商品・サービスのこだわりを理解する

ゆえに、M&Aの買収検討時に、対象企業の企業文化を事前に知りたければ、まずは、相手の商品・サービスを理解してみてはどうか。競合の商品・サービスと比べて、何が違うのか。技術的な違いはあるかもしれないが、それよりも当該商品・サービスのこだわり部分に着目するとよい。どの企業もリソースは有限であり、それらリソースをどこにどう投下するかは、各社の意思による。そして、その意思決定の結果が、自社商品・サービスである。ビジネスライクに儲けだけを追及している企業も中にはあるかもしれないが、大抵は、そのリソース配分の背景には、自社商品・サービスに対する想いがあるはずだ。それを理解することが、相手の企業文化を理解する糸口になるのではないか。そう思うと、クライアントの商品・サービスを実際に使ってみて、比較してみて、こだわりを少しでも感じられると、当社の企業文化の一端を掴めたようで面白くなる。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴

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