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言葉の定義は、円滑な議論に向けた第一ステップ

2021-09-24

言葉の定義は、円滑な議論に向けた第一ステップ

議論を始める前に、まずは言葉の定義をはっきりとさせたい

「当社の課題は何か?」「今回の論点は何か?」。いずれもビジネスの現場では日常茶飯事に聞かれるフレーズだと思うが、こういった議論を行うにあたって、まず始めに行うべきなのが、言葉の定義だと思っている。
今回例に挙げた2つのフレーズの中で定義が曖昧な言葉は、「課題」と「論点」である。
「課題」と言ったときに思い浮かべるものは、人によって様々だと思う。我々コンサルタントは普段「課題」という言葉を、「問題を解決するために取り組むべき課題」という意味で使っているが、「問題」とほぼ同義のものとして使っているケースもよく目にする。
「論点」に関しては、更に人によって使い方が異なる言葉だと思う。本来は「解くべき問い」という意味で用いられるべき言葉だが、単なる事象を指しているケースも多い(「売上を向上させるためにどの事業を強化すべきか?」を論点として設定していることもあれば、「売上が減少している」を論点だと言っていることもある)。

言葉の定義が明確でないと検討も前に進まない

議論を行うにあたって、なぜ言葉の定義が必要なのか?それは、言葉の定義について共通認識を持っていないと、同じ目線で話が出来ないため、議論の効率が低下してしまうからだ。
コンサルタントという職業柄、クライアントと経営課題の解決について議論を交わすことが多いが、我々とクライアント側あるいはクライアント社内でも「課題」という言葉の定義が異なっていることがほとんどである。そんな中、「課題」という言葉に対する認識がバラバラであったために起きた苦い経験がある。
とあるクライアントと、社内で起きている問題の解決に向けた検討を行うにあたり、コンサルタントである我々側から検討アプローチをクライアント側に説明したときのことである。「問題」と「課題」の言葉の違いがなかなか伝わらず、検討アプローチに対してメンバーが腹落ちするまでに時間を要し、本題に入るのが遅れてしまったのである。
勿論、説明の仕方に工夫の余地はあったと思うが、一般的な用語だからこそ、これまでの使い方と異なる定義で言葉を理解することは容易でないと感じた。しかし今振り返ると、検討アプローチを説明する段階で、「課題」という言葉の定義について共通認識を持てていなかったら、きっとその後の検討もかなり苦戦したと思っている。

ビジネスでよく使われる言葉は特に注意が必要

言葉の定義を明確にするというステップは非常に忘れやすい。なぜなら、定義が曖昧な言葉の多くが、普段定義など気にせずに使っているものだからだ。上で述べた「課題」や「論点」はその代表例だと思っている。ビジネスに関する情報が多様化し、いろんな人がいろんな場所でいろんな言葉を使っていることもあり、ビジネス関連で使われる言葉には定義が曖昧なものが多くなっているのではないだろうか。
BtoCのクライアントを支援していると、マーケティングについての議論を行うことも多いが、そんなときに誤用しているケースをよく目にするのが「ポジショニング」という言葉である。マーケティングの用語だが、単に何かしらの2軸を設定して、自社と競合企業をプロットすれば「ポジショニング」完成と思っている人が多いように感じている。しかし、マーケティング戦略を考えていく上での「ポジショニング」の位置付けを理解していれば、「ポジショニング」で用いる軸が何でも良いとはならないはずである。
ビジネスの現場では、定義の曖昧な言葉が、検討の阻害要因にもなりかねないため、注意が必要だと思っている。

M&Aでは子会社との言語共通化が肝要

M&Aの世界でも、言葉に対する認識の共通化は重要だと言われている。M&A後のPMIにおいては、言葉の認識が一つ違うだけでも、買収企業と被買収企業の間で情報格差が生まれてしまい、統合の妨げになりかねない。
PMIに関しては、被買収企業の社内用語について買収企業側も正しく理解することが重要とよく言われるが、それ以外にも、上述したような一般的な用語についても社内(あるいはグループ内)で共通認識を持つことを意識し、円滑なコミュニケーション・議論が可能な環境を整えることが必要ではないか。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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