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ROICから見える企業の特徴~手っ取り早い財務分析~

2021-02-19

本屋の店頭に並ぶビジネス書の定番

このところ、新型コロナウィルスの関係で外出がめっきり減ってしまった。このような環境になる前は、街中をそぞろ歩き、その時々の流行りすたりを見て歩くのが楽しみだった。新しいジャンルの店が出たら覗いてみたり、普段行くデパートやコンビニ、ソニプラのような店で、お薦めの商品をチェックしたり、街行く人達の装いを見ても変化があり、面白い。こういった好奇心はコンサルの仕事の上でも、必要であり、役立っていて、常日頃トレンドに敏感であるべきと思っている。面白さが見つかる場所として、本屋も立ち寄る定番のスポットである。本屋の店頭と言えば、昔から簡単な財務諸表の見方といったビジネス書が、よく並んでいる。
企業の業績を見られるようになりたいとのニーズは根強い。企業を調査することになったとき、皆さんは、どのようなアプローチで進めているだろうか?上場企業であれば、HPで企業概要、IR資料ページから、決算報告書、アニュアルレポートや統合報告書を読んで、製品情報を調べるというのが通常の流れではないだろうか。

ROICによる因数分解

以前は投資家に説明する企業業績を表す指標としてROEを投資家向け報告書に盛り込む企業が多かった。これは、伊藤レポートが企業のコミットする指標としてROE8%としたことがきっかけだったのであるが、このところのトレンドとしては統合報告書やアニュアルレポートでROIC(投下資本利益率)を指標として公開する企業が出てきている。ROICは、企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標である。
ROICは因数分解して、様々な指標に展開していけるところに良さがある。ROIC(営業利益/投下資本)は先ず、資本効率を表す投下資本回転率(売上高/投下資本)と収益性を表す売上高営業利益率(営業利益/売上高)に分解できる。更に投下資本回転率は、純固定資産回転率(売上高/純固定資産)と運転資本回転率(売上高/運転資本)に、売上高営業利益率は、売上高売上総利益率(売上総利益/売上高)と売上高販管費率(販管費/売上高)と売上高研究開発費率(研究開発費/売上高)と売上高設備投資率(設備投資額/売上高)といった具合に、どんどん因数分解できてしまうのである。これら因数分解された指標により企業を多様な観点で見ることができ、手っ取り早く企業の特徴を見つけることができるのである。

どのようなものが見えてくるのか?

例えば、ファイナンス系に舵を切った百貨店がある。2020年3月期決算でROICは5.4%と、日本の上場企業の平均が6%台で推移していることから見ると、資本効率が良いというわけではなく、これのみで特徴は見えない。ところが因数分解していくと、面白い特徴が出てきたのである。棚卸資産回転日数が7.3日と在庫を抱えるリスクが低い一方、売上債権回転日数が631日と非常に長くなっている特徴が見えてきた。この百貨店は、従前の小売ビジネスからテナントと定期借家(定借)契約を結び、リカーリングレベニュー(継続的収入)で収益を得るショッピングセンターのビジネスモデルに業態転換していたのである。定借契約の期間に得られる数年の収入を売上計上しているため、在庫はなく、債権回収の期間が異常に長いことになっていた。このように、その企業のビジネスモデルを分析する際には、ROICの因数分解から始めてみることをお薦めする。重要な指標をざっくり概観でき、企業の特徴を見て取ることができる。株主から資本効率を高める経営が求められており、ROIC自体も重要な指標であるが、このように手っ取り早く企業の特徴を見つけることができるため、従来の財務分析のアプローチより先ずは因数分解してみる、この方法はお薦めである。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 竹森久美子

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