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知財を利用した仕掛け型M&A~よいご縁を求めて~

2021-04-02

知財を利用した仕掛け型M&A~よいご縁を求めて~

別れと出会い

3月から4月にかけてのこの時期は、会社での異動があったり、新入社員が入ってきたり、学校も卒業、そして入学があり、人の出会い、別れの多い季節である。今年もまだ新型コロナの影響があるが、リアルで挨拶できずに別れるのはさびしいものである。筆者は昨年、修士課程を終え、博士課程に進んだが、卒業式と学位授与式が中止となり、同級生とは会わずじまいでの別れとなってしまった。なお、学位記は後日レターパックで郵送されてきて、味気ない感じであった。人に出会い、別れがあるように、M&Aの世界も企業どうしの出会い、親会社や株主との別れの場面がある。M&Aの出会い方もいろいろで、承継者がいなくて売却先を探していたり、コア事業に集中するためにノンコアの子会社を売却する提案があったりする。事業会社に勤めている方は、こういった提案に何度か、関わったことがあるのではないだろうか。

持ち込まれ案件と仕掛け型案件

上述のような提案を受ける案件は「持ち込まれ案件」と分類され、主に金融機関などから案内があったりする。これに対して、こちらからロングリストを作り、ターゲットを絞って対象会社に買収を提案するのは「仕掛け型案件」である。持ち込まれ案件にも掘り出しものがあったり、ちょうど自社が欲しがっている事業を営んでいる企業であったりするかもしれないが、通常は、そんなにぴったりの案件が来ることはない。そもそもM&Aは、売られているから買うという類のものではない。合わない企業を買ってしまうと、減損ということになり、財務状況の悪化から本業に悪影響を与えてしまうことも度々見られるし、企業は様々なステークホルダーが関わっているので、買収対象企業の経営を上手くまわすことができなければ、対象会社の従業員は勿論、様々な方面に迷惑がかかってしまう。M&Aを考えるタイミングとしては、中長期的な視点で、自社の成長戦略を立てる上で計画する事業に足りないリソースがあった場合に、例えばスペック、時間のタイミングや採算の点等から、自前で充足することができないとの判断になれば進めていくもので、慎重であるべきである。検討の進め方は、先ず、M&A候補をソーシングする。自社の事業戦略案で足りないリソースや自社との適合性なども考えて、求める対象企業のスペックの要件出しを行う。それら要件に当てはまる企業群をロングリスト化し、更に要件を詳細に見ながら、また買収そのものの可能性があるのかを分析しながら、フィルタリングしてショートリスト化していく。そして仲介企業を使ったり、取引先であれば直接様子を探ったりしながら、慎重に進めていく。

どのように仕掛けるか?

仕掛け型で要件出しをしていく際に、様々なアプローチ方法がある。例えば、技術を重視している企業であれば、知財を切り口に要件を出して買収対象企業の探索を行っていくことも考えられる。コア技術についての知財情報を切り口に、コア技術を使った応用製品を探索する。個々の特許には、特許庁が技術分類を付与しているので、技術分類を利用すれば探索しやすい。自社のコア技術と同じ技術分類がふられている特許から、自社と異なる製品に関するものを探し出すのである。更にその応用製品の市場情報(用途や市場有望性)を調査・分析して将来性のあることが予測できれば、その応用製品の市場に参入している企業を抽出し、買収候補とするアプローチがある。このアプローチを取ることの良さは、自社のコア技術を他の事業分野に横展開することにより、コア技術の強みを活かすことができる点にある。自社、買収企業ともに特許を保有していればコア技術についての強固な特許網を作り、参入障壁を築くことができる可能性があるし、お互いコア技術の部分で共通するため、技術そのものやエンジニアの人財の面でもシナジーを出しやすい。法人同士の出会いも、長くつきあっていけるいい出会いであることを願っている。我々もその一助となれるよう、今後も活動を続けていきたい。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 竹森久美子

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