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安易に型に頼らない

2023-01-13

安易に型に頼らない

“型”によって効率化はできるが品質は落ちると思った方が良い

仕事をしていると様々な”型”に出会う。例えば、採用面接の際の記録シートや、経費精算の際の申請フォーマット。こういった”型”が無く、それぞれが自由に面談シートや申請書を作ってしまうと、業務が非効率になってしまうのは言うまでもない。一方で、そういったバックオフィス的な資料だけでなく、自部署の業務を行う上でも様々な”型”があると思う。
経営コンサルという仕事の特性上、経営企画や事業企画の方々と一緒に仕事をすることが比較的多いが、よく目にする”型”として、経営層への報告フォーマットがある。経営層に何かを報告する際に、どういった内容をどのような粒度で記載するかを、あらかじめフォーマットに落としているものである。他にも、営業部だったら営業先との商談シートみたいなものもあるだろう。
こういった”型”は、資料の構成を都度考える手間を省くため、言うまでもなく業務の効率化に寄与するが、その一方で、資料の中身の品質を落とす作用もあると思っている。
以下で、”型”がいかにして品質を落とすのか?について、自分自身の経験から考察したい。

“型”を万能だと思ってしまう

コンサルの仕事の中でも”型”は多い。市場分析をする際に使うような思考の”型”から、クライアント向けの資料を作成する際の”型”まで、様々なものがあるが、こういった”型”は時に思考停止を招くので本当に注意が必要だと思っている。
例えば、3C分析やマーケティング・ミックスの考え方のような、一般的なビジネスにおいて検討すべき論点を体系化している”型”があるが、以前は何も考えずに、単純に一般的な考え方を、実際のビジネスに当てはめようとしていたこともあった。しかし、実際にはビジネスの内容が変われば、検討すべき論点も変わるはずで、一般的な考えの流用には限界がある。それをわきまえずに、”型”を乱用した結果、意味の分からない資料を量産してしまい、上司にやり直しを命じられたことは多い。
なまじ様々な”型”を知っているがゆえに、思考停止してしまっている人よりも、そういった”型”を全く知らずに、ゼロベースで考えている人からの意見から、ハッと気付かされることも多い。

“型”の表面的な部分だけを見て、本質的な意味を見失う

これは、クライアントの担当者から、経営層向けの報告資料の添削を頼まれた際の出来事である。
そのクライアントの社内では、経営層の報告時には、資料の冒頭でサマリをつけることになっているのだが、そのサマリの書き方は、フォーマット化されていた。私に添削を依頼した担当者は、フォーマットの内容に忠実に従い、サマリを作成していたのだが、その内容が非常に分かりづらかった。
もちろん、あらかじめ与えられた”型”を守って、求められる水準を担保しようとした姿勢は素晴らしいと思うのだが、おそらくその担当者は、「サマリ=経営層がそれだけ読んで内容全体を理解できるもの」という、サマリの本来の役割を意識していなかったのだと思っている。元々フォーマットでは、サマリでやや細かい内容まで詳細に書くことを求めていたが、この担当者が報告する内容はテーマが多岐に渡るため、そのフォーマットの粒度で書いていては、到底経営層が消化できる内容量にはならなかったのである。
それなら、もう少し粒度を粗くして、経営層に伝わりやすいものにしようというのが通常の思考だと思うが、”型”の表面的な部分だけを見て、サマリの本質を意識していなければ、それは難しい。

場合によっては、思い切って”型”を定めないという判断も必要かも

ここまで”型”を信じすぎるなと書いてきたが、”型”でガチガチに縛ってしまって良い例もある。それは、例えば、冒頭にも書いたようなバックオフィス系の資料の作成時である。採用面接の記録シートや経費申請書であれば、場合によって書く内容が大きく変わることも無いだろうし、内容の質はブレない。それなら効率化を重視して、”型”でガチガチに縛るべきである。
一方で、考察や示唆を求められる業務においては、”型”に頼り切らない方が良い。もちろん、すべてをゼロベースで考えていては、効率が落ちて、業務に支障が出るということもあると思うので、一部は”型”で縛ってしまって良いかもしれないが、特に考察や示唆を求められる箇所については、思い切って一律の”型”を定めない部分があっても良いのではないかと思う。例えば、先程例に出した経営層向けのサマリの書き方であっても、”型”を定めずに、ゼロベースで何を伝えたいのか?を考えた方が、結果的には良い資料になる可能性が高い。
個人的にも、“型”をベースとした、いわゆる左脳的な思考だけでなく、ゼロベースで直感的に考える右脳的な思考も兼ね備えていきたい。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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