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「母数」という言葉の意味を知っていますか?

2023-08-04

「母数」という言葉の意味を知っていますか?

違う意味で使われやすい言葉ランキングTOP10に入るであろう「母数」

仕事でアンケート調査結果などの数値データを使っているときに、よく聞く言葉で「母数」というワードがあるが、正しい意味で使われている場面をほとんど見たことがない。
この文章を読んでいる方々は、「母数」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか?多くの方は、データの数とか分母の値を想像するのではないだろうか。でも実は、「母数」というのは英語にするとParameterで、母集団を特徴づける定数(母集団の平均や分散等)を意味していて、データの数とかそういった意味は無い。おそらく、「分母」という言葉に“母”という漢字が使われているために、こういった誤用が広まっているのだと思う。
統計の分野に限らず、ある意味専門性の高い分野の議論を素人がする際には、こういったあやふやな言葉が多用されることが多いのかもしれない。
一方で、誤用が逆に一般的な用法になって、辞書の上でも意味が修正されることもあるようで、例えば(専門用語では無いが)「敷居が高い」という言葉は、”不義理や面目ないことがあって、その家に行きにくい”という意味が正しく、”高級だったり格が高かったりしてその家に入りにくい”という意味は無かったそうだが、あまりにも後者の意味で使われるので、2018年に後者の意味が辞書に加わったらしい。
そうすると、そのうち「母数」という言葉も、データの数とかそういった意味が付け加えられるのかもと思っている今日此の頃である。

意味が曖昧なまま言葉を使う弊害

実は恥ずかしながら、私自身上記の「母数」と同じような言葉の誤用を最近までしていた。それが「サンプル数」という言葉である。データの数的な意味で、「母数」を使うのは間違いだと知っていたので、代替となる言葉として「サンプル数」と言うことがたまにあったのだが、実はそれも間違いと最近知った。
「サンプル数」というのは、「標本数・群数」を意味しており、「何回標本の抽出をおこなったのか」という意味になる。例えば、薬の有効性を検証するために、100人の被験者向けのテストを10回行ってデータを取ったとしたら、サンプル数は10になる。つまり、「サンプル数」という言葉に、データの数という意味は無い。(データの数を示すのであれば、正しくは「サンプルサイズ」らしい)
実はこの誤用は結構怖くて、例えば、Aさんが”データの数”という意味で「サンプル数」と言ったときに、Bさんが”標本の数”という意味でAさんの言葉を受け取ると、全く別の意味で同じ言葉を認識してしまい、アンジャッシュのコントのような状況が生まれてしまうのである(伝わりますか?)。
そういった、アンジャッシュ現象は、意味が曖昧なまま言葉を使うことによって起こりうる弊害といえるのではないか。
他にも、単純に意味を間違って言葉を使うと、その方面に詳しい人(例えば統計学に詳しい人)とかと話すときに、「あ、この人分かってないな」と舐められて、対等な立場でコミュニケーションを取ってもらいづらくなるとか、そういった弊害もあるような気がする。

言葉の意味には細心の注意をはらいたい

コンサルという仕事柄、いろいろな業界や企業の内情について調査したり分析したりしているが、「この言葉は、この業界だとこういう使われ方をしている」とか「当社では、この言葉はこういう使い方をしている」とか、自分の認識と異なる言葉の使い方がされているということも結構ある。
なので、自分の立場的にも、意味が曖昧なまま言葉を使わないように注意しないといけないなと思いつつ、統計学の知識とかは、最近だとどの業界でも立場でも、使うことが多いので、そういった畑違いの分野に触れる際には、コンサルという立場に限らず、言葉の意味にはより敏感になった方が良いんだろうなとも思っている(新規事業開発の立場なんかは特にそうかもしれない)。
言葉の使い方は、細かい指摘になってウザいと思われるかもなどと思って、指摘されずに済まされることも多いと思うので、自分で意識していないと、大きなミスに繋がるまで気づかない可能性もある。今後も引き続き、言葉の意味には気をつけながら仕事をしていきたい。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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