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パンがなければケーキを食べればいい!?

2024-03-15

パンがなければケーキを食べればいい!?

パンがなければケーキを食べればいいじゃない

「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」という有名なフレーズがある。一般的には、あまりの困窮にパンを買えないフランス農民の現状を聞いたマリーアントワネットが言った言葉として知られていて、国民の生活状況を知らず、パンの代替物なら何でもあるじゃないかという傲慢さと、パンとケーキの価格の違いを知らない無知さを指摘する言葉として知られている。ただ、実際にはマリーアントワネットの発言ではないらしい。内容も、ケーキではなくブリオッシュという菓子パン(牛乳とバターと卵をたくさん使ったフランスパンよりもやや値段の高いパン)のことを言っていたらしい。ただし、いずれにせよ、高貴な身分の女性が、国民の生活状況を全く知らずにトンチンカンなことを言った発言であることに変わりはない。(フィクションかもしれないらしいがそれは今回おいておく)
一般的には「そんな発言するなんてありえないよね」みたいなニュアンスで引き合いに出されることが多いが、実生活において、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」的な発言をしていないだろうか?

日常生活や仕事の面で言ってないか?

例えば、仕事でよく「なんでリサーチする前に、リサーチの目的や論点、仮説をすり合わせておかなかったの?」とか「このアウトプットってクライアントにとって何が価値だと思っているの?」みたいな発言をすることがあるが、実はこれも「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」的な発言として受け取られているかもしれない。
たしかに、「何をリサーチすればいいかわからないなら、自分で仮説を立ててリサーチ設計すればいいじゃない」とか「アウトプットイメージが湧かなければ、自分がクライアントだと思って出てきたらうれしいアウトプットイメージを考えればいいじゃない」と言われても、民衆(コンサルタントやインターン生)は、「いやいやいや、そんなこと言われてもそもそもリサーチ設計がしっかりできないから困っているんですよ」とか「クライアントと直接対峙してないから想像がつかないんですよ」とか思っているかもしれない。

また、日常生活でも似たような発言をしたり、発言されたりすることもある。「税金が高いと嘆くなら、法人を作って経費にしちゃえばいいじゃない」とか、「給料をもっと上げたいなら、どこかの会社を買ってオーナーになればいいじゃない」とか。「いやいやいや、あなた簡単に言いますけどね・・」という反応にならざるを得ない。フランス民衆もこんな気持ちだったのかもしれない。そうなってしまうと、もうその人の話を真剣に聞こうと思わない。

傲慢さや無知さを感じられると話を聞いてもらえない

コンサルタントとしてクライアントと対峙する際にも、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」的な発言になっていないか気を付けなければならないと改めて思う。「不足しているリソースケイパビリティはXXXして補えばいいんじゃない?」とか、「目標値に足りない場合は、XXXというシナジーが創出できればいいんじゃない?」とか。アイデアベースでこういう発言をすることはもちろんあるが、あまりにも荒唐無稽なアイデアだと全く信用されないし、かといってあまりにも地に足の着きすぎたアイデアだと「外部のコンサルタントを雇って第三者の視点を入れている意味がない」となりかねない。クライアントから「この人の話は真剣に聞く価値があるな」と思われるために、程よくハイボールを投げつつ、でも具体性もあり、「あ、確かにできるかもしれない」と期待も持てる提案。このバランスが難しいのだと思う。「パンがなければケーキを食べたいところですが、それが無理なのは十分理解しているので、こうすればパンでもケーキでもないけどジャガイモが食べられてお腹が満たせるのではないでしょうか?」のような建設的な提案。あまり例えが良くないかもしれないが、あるべき論だけを提示する傲慢さや、クライアントにとって非現実的な解を提示する無知さを持ったコンサルタントにならないよう、意識したい。

MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太

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