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自戒から学んだ交渉の要諦をM&Aで

2020-07-10

仕事には交渉がつきもの

仕事には、交渉事が常につきまとう。取引先や仕入先との価格交渉、自分が社内で昇格昇給できるかどうかの交渉、上司から振られた仕事を誰がするかという役割分担の交渉、転職する際の年収条件の交渉、そして、M&Aにおける条件交渉など。一般的には、交渉の末の最終的な妥結点は、互いにWIN-WINの関係であるべきとされている。よって、これだけは譲れないというポイントを明確にした上で、利益の最大化を図りつつ、先方との利害一致、或いは全体利益の最大になる妥協点を見出すのが重要だ。

…と、理論では分かっていても、私自身は自分に関わる交渉が苦手だ。クライアントのための交渉事はアグレッシブに出来ても、自分自身のことになると、一気に面倒になってしまう。自分が折れてしまえば、それで終わるのではないかと思うと、一気にトーンダウンしてしまう。今回は、自戒の念を込めて、交渉時のNGをまとめてみたい。

衝動的な決断はダメ!

まず1つ目のNGは、衝動的な決断をしてしまうことだ。既に述べたとおり、私は自分自身のことになると、交渉自体が面倒になってしまう性質なので、時間が経てば経つほど、その場から逃れたくなる。相手に迫られれば迫られるほど、ここまで言ってくるなら、もういいかなと、段々気持ちが折れてくる(完全な根負けです)。そうなると、多少損してもいいかなと思い、エイヤ!で決断してしまうことが多い。そして、「まぁ相手が喜んでるから、それでいいか」と、よく分からない理由で、自分自身を納得させて終わる。私は特に仕事以外で余計な労力を使いたくないと割り切ってるタイプなので、日常生活における交渉事は負けっぱなしだ。その証拠に、私のスマホには、一度も使っていないオプション契約がたくさん付いている。

情報の全放出はダメ!

2つ目のNGは、自分の持っている情報をすべて示して、「後は良しなに考えてください」と、相手にボールを持たせてしまうことだ。この現象を自分で「情報の全放出」と呼んでいるが、これも私がよくやってしまうダメな行動の1つだ。交渉は期日を示した方が負けだと言われているが、私の場合、期日が迫っていなくても、面倒になってしまって、相手に任せてしまうことがある(要は、丸投げです)。結果として、先方が良心的であれば、上手い妥協点を導いてくれることもあるが、世間はそこまで甘くない。情報はあればあるほど良いわけで、先方に有利な条件を考えさせる材料を与えてしまっているに等しい。よほど先方を信頼していない限り、これも交渉時にはやらないほうがベターだ。

選択肢を狭める言動はダメ!

3つ目のNGは、自らその後の選択肢を狭めてしまう言動だ。2つ目のNGとも関係するが、情報さえあれば、交渉時の戦略はいくらでも考えられる。それゆえ、先方に示す情報はなるべく必要最低限に留めておく方が良いだろう。それは先方も同じだ。とすれば、先方からいつどのような新しい情報が入ってくるかは分からない。新たな情報が入ってくれば、こちらとして提示する条件も変わり得る。よって、自分で選択肢を狭めるような言動をしてはいけない。ギリギリまで決断せず、最後まで代替案を残しておくことだ。ファイナンスにおいて、リアルオプションの原理という考えがある。「不確実性のある将来において、柔軟性を持つプロジェクトや資産は、そうではないプロジェクトや資産に比べて高く評価できる」というもの。選択肢を狭めるというのは、自ら柔軟性をなくすことと等しい。

M&Aにおける交渉でも同様のことがないか?

M&Aにおいて交渉負けして高値掴みしてしまうケースはよく聞くが、実は、上記で挙げた3つのNGに当てはまるものも多いのではないか。特に、日本企業においては、“誠実”という名のもとで、正直過ぎる交渉をしているように思う。自分の事になると交渉下手なコンサルタントがいたなと思い出していただき、自社のM&Aにおける交渉を振り返っていただければ幸いだ。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴

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