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買収後は、意図的な摩擦が効く

2020-09-04

最初の関係性が悪いからといって、関係性の構築が止まるわけではない

「雨降って地固まる」とは、揉め事やトラブルが起きた後は、かえって物事が良い結果や安定した状態に収まるという比喩であるが、日々のコミュニケーションでも意図的に、敢えて「摩擦」を起こせるかが、相手との関係を深めるために重要だと感じている。例えば、最初は理解しえないように思えた者同士が、摩擦を通して本音や価値観を知ることで関係性を深めることは、私生活でもビジネスの現場でも多いのではないか。

あるクライアントの新規事業の拡大支援に携わっているが、コロナ禍の影響で、新規のアプローチ客先であっても直接訪問ではなく、電話でのアプローチしか取れない状況が続いている。私も実際コールドコールで新規の客先へのヒアリングの依頼を経験したが、電話口で厳しい対応をされることが多々あった。しかし、不思議と次のステップに進み、関係性を深めているのは、最初手厳しく対応いただいたお客さんである場合が多い。なぜだろうか?

摩擦を通して、お互いの意見を述べ合い、考え方を共有する

関係性を深めていくことができる客先は、意図的に、もしくは意図せずとも担当者の状況や大事にしている考え方を話し合えている場合が多い。現在必要性を感じていない場合やコロナ禍で案内を受けたくないなど、お客さんの入り口時点での反応が難色を示すものであっても、何らかの悩みや課題は抱えているはずである。そういった前提に立ち、何らかのお役に立てるのではないか、という誠実さをもって対応することで、厳しい反応を示していたお客様が、話を聞いてくれ、自ずと先方の悩みを話してくれることが多いのである。特に、相手の耳が少し痛くなるような課題の仮説をぶつけた場合には、向こうよりクライアントの新規事業に興味を示す反応がでてくる。こちらから、敢えて摩擦が起こるような問いかけを起こすことで、本音を引き出すようなコミュニケーションができた場合は、両社共にWin-Winの関係性に繋がる可能性が高い。

意図的に雨を降らせて、地を固める

もちろん、コミュニケーションの摩擦を起こす際は、相手を怒らせるだけの問いかけをするだけで終わってしまってはならない。ただ単に喧嘩のような摩擦を起こすような問いを投げっぱなしにするのではなく、問いかけに対する反応や相手の感情などを事前に検討し、前に話をすすめることができるような設計をしておく必要がある。例えば、相手にとって耳の痛いような話をする際には、「みんなが悩んでいる」や「より良い姿に取り組んでいらっしゃる」というようなクッションを置くなど、フォローを忘れないようにすることが大事だと考えている。意図的に本音や考え方を引き出すようなコミュニケーションを仕掛けつつ、ただの衝突で終わらないフォローも事前に設計しておく。特に昨今のコロナ禍での状況では、電話やWEB会議が中心で、相手と直接コミュニケーションを取る機会が限られている。ゆえに、従来では感じていた相手の仕草やその場の空気感など、オンラインでは感知しにくい情報も増えてきている。だからこそ、会話でのやり取りが重要で、摩擦を引き起こす際には、問いかける言葉などの事前の設計がますます肝要となっている。

買収後こそ、意図的な摩擦を通して本音でのやり取りを引き出す

M&Aの現場では、会社間の立場が異なるからこそ、コミュニケーションの難易度が上がったり、そもそものやり取り自体が断絶してしまっている場合が多いのではないか。特に親会社による子会社買収の関係性においては、買収時からの両社間での不文律や忖度が働いてしまい、本音での意見交換や衝突を避けてしまうことあるのではないか。しかし、より良いビジネスや組織へと成長するためには、「このままでいいのか」や「ここは変えた方がいい」という意見を引き出し、行動に移していく必要がある。敢えて摩擦を起こし、次に活かすような本音を引き出す機会を作ることはできないか、模索し続けることが肝要なのではないか。

MAVIS PARTNERS アナリスト 橋本良汰

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