1.アナリスト
印刷新しい考え方・文化を恐れない心が仕事の幅を拡げる
2021-02-12
新たな考え方・文化を受け付けない自分がいる
2020年も年末に差し掛かったある日、私はネット上のある記事を読んで衝撃を受けた。その記事の名前は「TikTok流行語大賞2020」。1位「#時を戻そう」2位「#きゅんです」3位「#絵文字チャレンジ」・・・当時の私は1つも意味が分からなかった。
これらの言葉は、どれも若者の間では常識のように使われている言葉だということを後から知り、27歳にしてここまで若者文化から取り残されてしまったのかと少しショックを受けた。
思えばここ数年、流行りの音楽もアニメもドラマも、全くと言っていいほど触れてこなかった。SNSや街中のBGMで多少耳にしても、それを受け入れることを拒否していた自分がいた気がする。
無意識の防衛本能が原因かも
とあるWEBライターが、最近の鬼滅の刃ブームを引き合いに、大人が新しい考え方や文化に触れることを敬遠する理由を説明していたのだが、それは「新しいものはしんどい」ということだった。人は何かを好きになったとき、それに夢中になり、のめりこむ。のめりこむことで様々なものを犠牲にし、良くない結果をもたらすかもしれない。そう思って無意識に自分を、または自分のアイデンティティを守ろうとしてしまい、新しいものに触れることを避けてしまっているのではないか、ということだった。
なるほど確かにそうかもしれない。新しいことを吸収するとき、必ずそれに少なくない時間と体力を費やすことになるし、対象が仕事と関係のない音楽や芸能といったジャンルになれば、大人がそれを敬遠してしまうのも無理はない。
最近のエンタメ事情にキャッチアップしたおかげでクライアントと対等に話ができた
さて、最近の若者言葉や流行りの曲を全く知らなかった私は、まずは出来ることから始めようと、登録していたApple musicで、2020年のヒットソングをダウンロードし、聞き始めた。
2020年に大ヒットしたアーティストにNiziUがいる。彼女たちは韓国の芸能事務所JYPエンターテインメントとソニー・ミュージックによる日韓合同グローバルオーディションから選ばれた9人組ガールズグループで、オーディションから動画配信サービス上で選考プロセスを公開するなど、独特のマーケティング手法で多くの日本国民の支持を得ている。
当然のごとく、2020年の年末になるまでNiziUのことなど何も知らなかった私だが、オーディション時の動画など観てみると、案外面白くて見入ってしまった。
後日、当時支援していたプロジェクトで、たまたまエンタメ分野の市場について調査・分析し新規事業を考える機会があった。クライアントは最新のトレンドには詳しく、NiziUの話にもなったが、最新トレンドを受け入れようという意識の転換が幸いし、なんとかその場の議論を乗り越えることができた。
忙しい中で最新トレンドに常にキャッチアップするのは困難
もちろん、趣味が多様化し目まぐるしく流行が変化する現代において、すべての最新トレンドにキャッチアップすることは、時間の限られている社会人にとって非現実的だ。事実、私もTiktokのような最近のSNSや、流行りのドラマなどに対するキャッチアップはできていない。まずは自分にとってハードルの低いところからキャッチアップを始めていくのが良いと思う。
例えば私はApple musicに登録していたので、最新の曲を聞くことは簡単だったし、移動中や作業中に聞けば、そこまで多くの時間をそれに浪費することもなかった。また、昔からマンガを読むことは好きだったので、鬼滅の刃を読むことにも抵抗はなかったし、土日に一気読みすれば、時間や体力の消耗は最小限に抑えられた。
ちなみに弊社の顧問は70代であるが、鬼滅の刃は全巻読んだし、ワイドショーなどで最近のトレンドにもキャッチアップしているらしい。何歳になっても新しいことを吸収し続ける姿勢に驚く。
ジャンルによらず新しいことの吸収は自分の仕事の可能性を拡げる
最近、新規事業の検討をご支援する機会が増えたように感じるが、言うまでもなく新規事業には新規性が求められる。新規性は、必ずしも最新のトレンドを加味する必要があるわけではないが、特にBtoCの事業では、最近の消費トレンドや若年層の思考回路などを抑えておくことは肝要だろう。
これまであまり考えたこともなかったが、エンタメなど娯楽分野における最新トレンドへのキャッチアップが、自分のできる仕事の幅を拡げることにつながるのではないかと思う。
MAVIS PARTNERS アナリスト 井田倫宏