1.アナリスト
印刷「会社は学校じゃねぇんだよ」への個人的な意見
2024-03-01
「会社は学校じゃねえんだよ」
「会社は学校じゃねえんだよ」というドラマがあるらしい。このタイトルに込められたメッセージはおそらく「会社は学校ほど甘くねぇんだよ」ということなのだろう。例えば、会社では試験の点数で公平に評価されるわけではないし、教師のように上司から手取り足取り仕事を教えてもらえるわけではないし、会社は社員一人一人のためでなく株主の利益追求のために存在する。言いたいことはよく理解できるし全く異論はないが、このような分かり切ったメッセージをあえて口にするのは、学生気分で仕事をする若手社員を憂いたベテラン社員がほとんどなのだろう。個人的には、「学生気分をやめろ」を遠回しに伝えるような回りくどい指摘の仕方をするのは少し性格が悪いと思ってしまう。
「会社は学校を超える学びの場」でもいい
前段から大きく方向転換するが、私個人としては厳しさの違いこそあれ会社は学校と捉えてもよいと思う。(これは被雇用者に汗水たらして必死に働いてほしい雇用者からすると嬉しい言葉でないかもしれないが)もちろん、だらだら学生気分を続けているという意味ではく、学びの場としての会社の有用性を主張している。教師による講義や期末試験はないが、貴重な「実践の機会」を与えられ、試行錯誤を重ねて業務を遂行する中で多くの学びを得ることができる。学ぶことができるのは業務に関する専門知識だけではない。例えば、上手く人とコミュニケーションを取りながら物事を前に進めていく術や、タスクの優先順位をつけて効率的にこなしていく術など、プライベートでも活躍するような汎用的なスキルもあり、普段からアンテナさえ広げていれば学ぶことは多い。そして、自らが学んだことを生かして更なる成果を出せば経済的な報酬を得られるばかりか、より大きな学びを得られる「良質な仕事の機会」が降ってくることもあるだろう。「仕事の報酬は仕事」と言われることもあるが、「実践の機会」は大変貴重なもので誰にでもアクセスできる代物ではないと思う。それに比べれば本から学べることは少し物足りない。これは本の虫だった私が大学時代に得た大事な気づきかもしれない。
会社は〇〇だ、という考え方は人それぞれ
「会社は学びの場」という考えは誰にでも当てはまることではないことは承知している。家族を養うことだけを考えて働いている人もいるだろうし、お金を稼ぐことが働く目的な人もいるだろう。好きなことを仕事にしていること自体が恵まれているのかもしれない。働くことの目的は人それぞれ違うことは許容すべきだ。とはいえ、目的の違う人たちが一緒に仕事をすると不要な摩擦や組織への悪影響が発生するような気がする。「仕事はしんどいもので休日こそが人生」と考えている人と、「仕事こそが人生」と考えている人が同じチームで働いていればお互いの考え方の違いによって衝突が起こってしまうことも容易に想像できる。一方で、仕事に対するモチベーションが近い人たちが集まった会社は大変居心地がいい。中でも「仕事の報酬は仕事」と考えている人たちだけが集まる会社はかけがえのない競争優位性を持っているとも言える。大学生の時バイトをしていた「渋谷の緑の会社」(社名を出さなくとも多くの人が分かるだろう)では社員の多くが同じように仕事に熱中し、楽しんで仕事をしているように見えた。そしてそのカルチャーを維持するような会社による働きかけも多かったように思う。また、実際にその会社は圧倒的に成長をしていた。私はそんなカルチャーが好きだったし、気の合う周りの友人もこの会社へ入社していたのでカルチャーフィットはしていたのだろう。そんな経験もあり就職活動の時の軸の一つにはカルチャーがあった。これは今でも変わっておらず、その会社のカルチャーこそが会社の形を決定する最大の要素だと思っている。
MAVIS PARTNERS アナリスト 松村寿明