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オーナーシップとやらされ仕事

2024-05-31

オーナーシップとやらされ仕事

オーナーシップとは何か

サラリーマンが仕事をする上で最も重要なマインドは何か?と聞かれたら「オーナーシップ」と答える。直訳すると「所有権」という意味だが、「与えられた職務やミッションに対して主体性を持ち、取り組む姿勢やマインド」という意味で使われることもある。新卒で大手企業に入社した方の多くは充実した研修を受けていることだろう。研修では「名刺の渡し方」といったビジネスマナーや、「PPT・Excelの操作方法」といった基礎スキルだけでなく、「自責思考」や「チームプレー」といった仕事に対するマインドセットを教え込まれたという人も多い。マインドセットにも様々な種類があり、企業によって重視することに違いがある。そんな数あるマインドセットの中でも「オーナーシップ」は、もっとも重要度の高いマインドセットなのではないかと個人的に考えている。

オーナーシップの効用

なぜ「オーナーシップ」が重要視されるかというと、仕事のパフォーマンスに直結するからである。与えられた仕事へのオーナーシップが無ければ、いわゆる「やらされ仕事」になってしまう。「やらされ仕事」では、指示されたことをその通りに終わらせることだけが目的となってしまい、指示されたこと以上の創意工夫を凝らすことはしない。だが、指示されたことだけをして本来のミッションやゴールが達成できないこともある。指示した人間は全ての情報を把握したうえで完璧な指示を出せているわけではないからだ。指示された側が実際に業務を進める中で得た情報や気づきを元に、創意工夫を凝らすことで初めてミッションが達成できる。
また、創意工夫は仕事の成果にも直結するばかりか、一つの仕事から得られる経験値の量にも違いをもたらし、個人の成長にも大きな影響を及ぼす。創意工夫を凝らすということは、試行錯誤が増えるということであり、試行錯誤が増えれば、それだけ新たな学びが増える。つまり、創意工夫を凝らすことで、与えられた仕事から得られる学びを最大化することができるということである。
要するに、オーナーシップは仕事の質を高め、自己成長を加速してくれる魔法のマインドセットなのである。

オーナーシップの持ち方

オーナーシップにもレベルの違いがある。例えば大雑把に次の3つに分けることもできる。
①与えられた個人のミッションに対するオーナーシップ…これは責任ある社会人であれば誰もが持ち合わせているはず。
②チームのミッションに対するオーナーシップ…これはチームリーダーの立場でなければ意識しづらい。
③会社または組織全体のミッションに対するオーナーシップ…これも社長や役員の立場でなければ意識しづらい。
②や③のオーナーシップは平社員の立場であれば、意識しないことが多いだろう。目の前の個人のミッションを達成することで精一杯なことも多い。ただ、ある程度個人のミッションに慣れてきた後には次のレベルを意識して視座を高めなければ、それ以上仕事の質は高まらない。ただし、単に意識をするだけで得られる変化は限定的である。例えば、従業員は皆経営者目線を持って仕事をするべきだ、という考えがある。会社の存続に責任を持つ経営者の目線で仕事をすれば恐ろしいパフォーマンスが発揮できてしまう気もするが、実際に経営者ではない以上、本当に経営者目線を持つことは難しい。やはり、実際に②や③のオーナーシップをもつには、相応の立場に就くのが望ましい。「立場が人を作る」という言葉があるように、実際にその立場にいるからこそ見える景色があり、感じる責任感も全く違うだろう。
さて、相応の立場に就くためには良い評価を獲得しながら、手を挙げ続けることが重要だ。とはいえ、重要ポストがベテランで埋まってしまい若手有望人材が就くポストが枯渇した企業もあるだろうし、その一方で、入社数年で子会社社長に抜擢し、経験も少ない中で圧倒的な当事者意識で事業にコミットさせ、経営者人材を育てているような企業もある。つまりは、高いレベルのオーナーシップを持つことができる「環境」も重要な要素だということだ。

MAVIS PARTNERS アナリスト 松村寿明

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