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マニュアルと柔軟性の狭間で

2024-05-24

マニュアルと柔軟性の狭間で

とあるカフェで感じた違和感

先日、とあるカフェを訪れた際のことだ。そのカフェは先払い形式で、まずレジに行く必要がある。しかし、店員から「先にお席の確認をお願いします」と言われた。店内が混雑しているのであれば理解できるが、その時はかなり空いており、20席ほどが空いているのは明らかだった。この時、私は「マニュアル通りの対応が過ぎるのではないか」と感じた。もちろん、直接口に出すことはなかったが、心の中ではそのように思った。
一方で、コンビニでお酒やタバコを購入する際、明らかに成人していると思われる人に対しても年齢確認を行うことには一定の納得感がある。
この感覚の違いは何なのか?と考えてみたとき、自らの仕事にも通じる気づきを得られたので、それをコラムとして書こうと思った。

マニュアル対応によるハレーションと柔軟対応による責任問題

個人的には上記の感覚の差は、①マニュアル通りに行動した結果、不必要だった場合の相手の不快感と、②マニュアル通りに行動しなかった場合に生じる自らの責任問題のバランスから来ているのではと思っている。前者のカフェのケースでは、①の不快感はある程度存在するが、②の責任問題は全くない。席を確保できなかったとしても、それは顧客の責任と片付けられるからだ。一方、後者のコンビニのケースでは、①の不快感も存在するが、②の責任問題も非常に大きい。見た目で判断する年齢は人によって異なるため、未成年だった場合の責任は重大である。
そして、このような考え方は、我々コンサルの仕事にも通じる部分があるかもしれない。

コンサルの仕事で例えると

例えば、クライアントの事業計画を作成する際、マクロ的な動向をベースに考えたいということで、市場規模の推定を依頼されたとする。市場規模を予測するためには、市販レポートに加え、有識者の見解や競合の考えなど、様々な外部情報をリサーチするのが通常だ。そんなときに、クライアントのマーケティング部門担当者が「業界のことはよく知っているから、その通りに計算してほしい」と言った場合、その言葉を鵜呑みにするのは危険だと思う。市場規模というのは当該クライアントの意思や行動以外が左右する要素が大きく、その推定結果に対してはコンサル側が責任を持たないといけないからだ(もし結果が外れた場合、その責任を問われる可能性がある)。
一方、事業計画そのものについては、クライアント側が自信を持って提示した計画であれば、細かい確認をせずにある程度受け入れることも一案かと思う。計画は最終的にはクライアントの意思が込められたものであり、その達成ができなかったとしても、コンサルタントに過度な責任が生じるわけではない。

“バランス感覚”が仕事の価値を左右する

上記のケースはコンサルの仕事の一例に過ぎず、他にも似たようなケースは多く存在するが、重要なのは、どの部分でクライアントの意見を尊重し、どの部分でコンサルタントとして食い下がるかという線引きを適切に行うことなのかもしれない。
すべての論点に対して杓子定規にあるべき論を説いて対応するのは、時として非効率だし、クライアントにも価値を感じてもらいづらい。一方で、すべてクライアントの言う通りにするのも、単なる迎合に過ぎない。
このバランスを取ることが、限られたリソースの中でクライアントに価値を提供できるコンサルタントとそうでないコンサルタントの違いなのかもなと。
この話はコンサルに限らず、様々なビジネスシーンに通じるものなのではないだろうか。人手不足が多方面で叫ばれていて、人的リソースが無尽蔵にあるわけではない現代において、どこにこだわって仕事をすべきか?の線引はとても重要になる気がする。
これからの人生において、コンサルを続けるとしても、他の仕事にチャレンジするとしても、この”バランス感覚”というのは意識したいし、磨いていきたいと思った。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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