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1.アナリスト

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自分は数字を信じなければいけないが、人は数字だけを信じない

2020-05-22

自分の判断に数字以外を用いてはいけない

クライアント先で倉庫の人件費の増大が課題となっていたので、倉庫の部門長にヒアリングをおこなったときのこと。
部門長は「もう今でもギリギリの状態ですよ。これ以上削れません。人が足りなくて一部土曜出勤をしているくらいですから。」といい、その表情からは嘘を言っているようには見えなかった。手元には倉庫の必要総作業量は昨年より減少し、かつ人が増えていることを示すデータがあった。

本来であれば、ここから昨年と今年の変更点を洗い出し、一人あたりの生産性が落ちている原因を特定して改善していくべきであるが、私はその部門長の追い詰められている表情を見て思考が停止してしまった。この様子だとオペレーションの改善なども行ったうえで、それでも人が足りないから追加しているのだなと「情」だけを頼りに、これ以上人件費は削れなさそうだなという感情を持ってしまった。

私生活の上では「情」で判断するモノは往々にしてあるだろう。家族や恋人など自分にとって密な存在に対してほど、「情」で判断してしまうことが多いのではないか。

しかし、ビジネスにおいて一般的に判断の根拠として使えるのは、
①因果関係(例:目にゴミが入ったから涙がでる)
②例証(例:寒い日には温かいものが売れやすい)
③基準(例:アメリカの大学を卒業しているから英語が話せる)
の三つであると言われていて、全て数字で言い表すことができる。
ビジネス上の意思決定を行う際には、多数のステイクホルダーが絡む以上、誰もがそうであると判断ができるような数字を根拠に用いなければいけない。

信頼関係がないと数字さえ疑われてしまう

しかし、客観的にそうであると判断できる数字すら信じてもらえないときがある。クライアント先で「A商品の販売を続けるか否か」という議題での会議があった。Xさんは売上の低迷やコストの増大、テコ入れにかかる費用対効果など、販売を取りやめたほうがいい根拠の数字を出していて、確かに販売を取りやめたほうのメリットが大きいと感じる内容であった。

ところが、Xさんの日ごろの仕事ぶりや態度などが原因で、敵対視していたYさんは真っ向から反対した。「その数字は~から持ってきていると言っていたが、途中で破損していないか」「どこかExcelの計算式を間違ったりはしていないか」など、数字から疑いはじめ、YさんはXさんの主張を受け入れる様子が全くなかった。

根拠となる元データを疑うことは決して悪いことではないが、これがもし二人の信頼関係が良好であったならば、YさんはXさんの提示した数字を疑っていただろうか。信頼関係がマイナスな状態にあるとき、確かな数字にすら人は懐疑的になってしまうことがおおいのではないか。

相手の領域での確かな数字から会話を広げていく

とはいえ、初対面の信頼関係が0の状態の人を説得する必要がある場面は多く、相手を説得するために、話し方や身なりなどほかにも要素はあるだろうが、最も有効なのは数字を見せることである。ここで気を付けたいのは持ち札の数字の使い方だ。相手に疑念を持たせず信頼を得るために、相手の理解している数字から会話に入っていくのが有効だと感じた。導入部から相手の知らない数字を用いて話を始めると、身構えて最後まで防御態勢の相手を説得していかなければならなくなる。こちらのゴールの主張を通すために、導入部で相手がすでに知っている数字を提示して共通の土台を作りから始めたほうが、スムーズに会話が進む。

共通の土台を作ったあと、初めての相手であれば数字ごとに
①どうやって集めたか
②何を表しているか
③どう活用していくか
の三点に気を付けながら私は話すように心がけている。
中には細かく話されることを嫌う人もいるだろうが、根拠のある数字を提示してくる人間であると相手に印象付けなければ、そのあとどんなに素晴らしい話をしたところで、相手には疑念が残ってしまうのではないか。

MAVIS PARTNERS アナリスト 北川和道

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