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使い古された「M&Aと結婚は似ている」論・再考

2023-11-24

使い古された「M&Aと結婚は似ている」論・再考

M&Aと結婚って本当に似ているの?

よく“M&Aと結婚は似ている“と言われる。弊社代表もはるか昔にそんな記事を書いていたし、弊社の元アナリストもそんなようなコラムを書いていた。「目的が定まれば相手に求める要件が定まる!」とか「結婚生活がうまくいきそうか交際期間に見極めるプロセスはDDに似ている!」とか「理想が高すぎると相手も見つからないし一緒になった後もうまくいかない!」とか、M&Aと結婚が似ているという話はM&Aをかじったことがある人ならば何度も聞いたことがある使い古されたネタである。そして私も、似ているなーと思っていたし、M&Aのこと全然わかりません、という人に説明するときに「結婚みたいなものです」と伝えることもあった。
しかし、果たして本当にそうなのだろうか。こんなふとした疑問が、最近とある企業のM&A振り返りプロジェクトをやっている中で生まれた。

結婚は“惚れ込んだ方が幸せ”

M&Aの世界ではよく、「対象企業に惚れこみすぎない」ということが定説になっている。対象企業に惚れこみすぎると絶対にその企業が欲しくなって他の候補企業に目がいかなくなるとか、当初の買収金額よりも高くてもDealを成立させようとしてしまうとか、DDで欠点が見つかっても甘く考えてしまうとか、“惚れ込みすぎるデメリット”がオンパレードだからだ。なので、過去のDealを振り返るときには「惚れこみすぎて冷静な判断ができていなかったのではないか?」という観点で評価を行う。
確かに、男女の関係でも“惚れ込みすぎてはだめ”ということは正しい面もあるだろう。ダメ男に惚れこみすぎている女の子に女友達が「あなた彼氏のことが好きすぎて他の男が見えてないかもしれないけど、世の中にはほかにもいい男いっぱいいるよ」とか、彼女のことを好きすぎる彼氏に対して男友達が「お前彼女を落とすためにそんなに高いプレゼントあげる必要ある?そんなんで結婚したら大変だぞ」とか、「その価値観が合わないのはお前が思っている以上に結婚後苦労すると思うよ」とか、テンプレで使えるぐらいよく聞くセリフだ。
話をM&Aに戻すと、M&Aにおいては「対象企業に惚れこみすぎない」ことは正解だと思う。しかし、結婚においても、相手に惚れこみすぎてはだめなのだろうか?周りを見渡してみてほしい。幸せそうなカップルや、幸せそうな夫婦は、どちらかがどちらかに(あるいはお互いがお互いを)惚れこんでいないだろうか?

正解と幸せは違う

先日、ネットである動画を見た。それは海外のコメディアンか何かが「奥さんが間違った意見を言ったとき、どう立ち回るべきか?」というネタでスタンドアップコメディみたいなことをやっていた動画だ。うろ覚えなのだが、彼はこう言っていた。

「僕の意見も妻の意見も正しい時、正しいのは妻だ。僕の意見が間違っていて妻の意見が正しい時、正しいのはもちろん妻だ。ここからが難しいよ。僕の意見が正しくて、妻の意見が間違っているときは?正しいのは妻だ。では、僕の意見が間違っていて、妻の意見が間違っているときは?そう、間違っているのは僕だ。“君が間違っているよ”とか、“どちらも間違っていたね”なんていう正しい答えなんかどうだっていいんだ、正解よりも幸せが大事だからね。」

この動画を見たとき、面白いとかつまらないとかではなく、ものすごく刺さった。正解と幸せは違うのだ。
さて、M&Aと結婚の話に戻ろう。M&Aは“対象企業に惚れこみすぎない”ことが正しい。誤解を恐れずに言うと、M&Aというのは会社の成長にとって“正しい選択”であるべきだからだ。つまりM&Aとは常に正解を探しているのだ。
一方で、結婚はどうだろう?正解を探しているのだろうか?そもそも正解とは何だろうか?結婚とはお互いが幸せになるための手段であるはずだ。客観的に見て、それが正解ではなかったとしても、惚れ込みすぎていた方が幸せなのかもしれない。
では、ここからが難しい。惚れ込みすぎていない場合は・・・??求めるのは正解か、幸せか。一生かかっても解けない難問。あなたはどう考えるだろうか?

MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太

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