2.アソシエイト
印刷コマが足りない
2023-11-10
内容が頭に入ってこないのは”コマ”が足りないせい
先日X(旧ツイッター)を見ていたら、ある漫画家の投稿が目に留まった。
「内容が特に難しくないのに全然頭に入ってこない漫画ってのは、コマが足りていない可能性が高いんだ」
その漫画家が下積み時代に、先輩の漫画家から言われた言葉で、いまでも役に立っているダメ出しだという。
例えば、冒険モノの漫画で、主人公が敵に出くわすまでのストーリーを、「主人公が旅に出る」という1コマと、「敵と対面する」というという1コマで表現した場合、必要最低限の情報は表現しているものの、その2コマの間には、読者に負担をかけないために必要な”コマ”が足りていないのだと言う。この場合で言えば、「敵の足元が見える」というコマと、「それに気づいた主人公の顔」というコマがあることによって、読者はスムーズに話を理解することができるとのこと(文章でうまく表現しきれないのですが・・・)。
実はこれって、ビジネスマンの資料作成にも通じる部分が無いか?とふと思った。
伝わらない成果・発見・努力
自分(達)が考えていることを他者に伝え、腹落ちしてもらうというプロセスは、組織の中で働いていれば必然的に発生すると思う。そんなとき、自分(達)が考えていることがなかなか伝わらず、周囲の納得を得られなかったり、議論が前に進まなかったりした経験は無いだろうか。振り返ってみると、これまで何度か、そういったモヤモヤした経験があるなと思った。
とあるクライアントのプロジェクトで、社長が発案者のアプリのユーザー拡大に向けたマーケティング戦略を議論することになった。そこで私は、マーケティングの担当者等にヒアリングすることで、アプリのユーザーに関する情報や、想定しているターゲットに関して事前の情報収集を行い、その時点で想定されるアプリユーザー拡大の方向性について、仮説を社長にぶつけて議論をしようとした。するとその社長は「なんだこれは。俺が考えていることと違うぞ。」という反応で、議論どころでは無くなってしまった。
今考えてみると、必要な”コマ”が足りていなかったのも一つの要因だったと思う。発案者が社長であることを考えれば、「そもそも社長はどういった想いや狙いでこのアプリを開発することにしたのか?」から振り返って、「当初の社長の想いや狙いと現状のユーザーの使い方のギャップ」を整理した上で、上記のような分析・検討結果を示すべきだった。”コマ”が1つも2つも足りなかったように思う。
伝わる報告書の作成は、報告相手の顔を思い浮かべることから
先日もプロジェクトの最終報告会に向けて、資料の骨子やスライド構成を練っていたのだが、どうにも内容がしっくり来ずに、時間ばかりがどんどん過ぎていった。伝えたいことは頭の中にあるのに、自分が作っている資料では、的確に伝わる気がせず、一人でモヤモヤしていた。
そこで、クライアントの姿を思い浮かべながら、作りかけの資料を声に出して説明してみた。すると、「あ、この説明をするならこんな内容のスライドがあると楽になるな」とか「この説明をしたら、たぶんこんな反応をされるだろうから、この説明紙も入れておこう」とか、足りていなかった”コマ”が見えてきた。相手の顔を思い浮かべて、模擬的に説明をしてみるだけで、こんなにも頭が働くのかと驚いた。
以前いた会社で先輩から「報告会資料はそれまでの会議資料をくっつければ終わりだから」と言われたことがある。しかしそれは必ずしも正しくはないと今では思っている。会議資料の組み合わせだけでしっかりと伝わる資料になれば良いが、報告会資料として検討全体のストーリーを伝える際に、新たに必要となる”コマ”は大体発生するからだ。
これからも、おそらく仕事をリタイアするまで、何かしら他人に考えを伝えるシーンは発生すると思うが、足りていない”コマ”は無いか?ということを常に意識して取り組んでいきたいと思う。
MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏