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言語化することで「伝わる」のではなく、言語化することで「議論ができる」

2022-08-12

言語化することで「伝わる」のではなく、言語化することで「議論ができる」

バチェロレッテにみる言語化する能力の高低

みなさんはAmazon Prime配信番組のバチェラー・バチェロレッテシリーズをご存じだろうか。ご存じない方のために簡単に解説すると、容姿端麗でハイスペックな経歴を持ち恋愛対象として“理想的な”男性1名の恋人の座を巡り複数の女性候補者が争う恋愛リアリティ番組が「バチェラー」であり、その男女逆転版が「バチェロレッテ」である。そのバチェロレッテシリーズの最新作であるシーズン2が先月公開された。私は結構好きで、最新作が出るたびに見ているのだが、今回のバチェロレッテ・シーズン2は2年前に公開されたシーズン1と比べてあまり面白くなかった。なんで面白くないのかなと、シーズン1の最終回をちょこちょこ見返していたのだが、バチェロレッテの圧倒的な言語化能力の違いなのではないかと感じた。
このコラムで人様の恋愛模様をとやかく言うつもりはないが、シーズン1の主役(バチェロレッテ)である福田さんという女性は、シーズン2の主役である尾崎さんよりも圧倒的に自分の思いを言葉にする能力に長けていると感じた。番組の中で下した福田さんの決断には賛否両論あるものの、なぜその決断を下したのかという理由をしっかりと説明してくれていたので、福田さんの考えに賛成だとか反対だとかの議論ができていた。議論ができれば番組が盛り上がるし、視聴者もその議論に加われる。一方で、今回の主役である尾崎さんも間違いなく優秀な女性で、深く思考した上でいろいろな決断を下しているのだと思うが、いまいち何を考えているのかが(視聴者である私には)わからず、見ていて退屈だった。

ヒトモノカネを動かすためにも重要な言語化力

話は変わるが、別の出来事でも「言語化する力って大事なんだな」と再認識したことがあった。先日とある用事があり欧州に行ってきたのだが、その時にスイスの大学で物理学のとある分野の研究者の方と飲む機会があった。ざっくばらんに、その方の専門分野やスイスでの生活などいろいろなことを話す中で、「自分がやりたいと思っている研究に十分なお金が回ってこない、やりたい研究に人が集まらない」というようなお話を伺った。日本で研究者と話すときにも同じような悩みを聞くことがあり、「国は違えどもみんな悩みは同じだなぁ」と思い、軽いトーンで、「企業からお金を引っ張ってくればいいんじゃないですか?そういう最先端の研究にお金を投資したい企業や、技術者や研究者を出向させたい企業はたくさんいると思いますよ」と話をした。するとその人は、「でも企業側をどう説得すれば投資してもらえるんでしょうね」という極めて真っ当な疑問を述べられた。その時私は、「それって実は企業の担当者も悩んでいて、投資をしたい先に投資を実行するために株主をはじめとしたステークホルダーを納得させるためのストーリー作りを第三者として一緒に考えることもありますよ」というような話をした。「お金を出す企業の担当者も、お金が欲しい大学の研究者も同じことで悩んでいるのは面白いですね、大学の研究者が企業を説得するストーリー作りも手伝ってくださいよ」という話で少し盛り上がったのだが、ストーリーテリングの能力(広い意味で言語化する力とする)はどの立場でも求められていると再認識した出来事だった。

言語化する能力が重要な理由

上記のようなエピソードがなくても言語化する能力が大事だということについては誰もが賛成することだと思うが、改めて、なぜ「言語化すること」が大事なのかと問われれば、みなさんはなんと回答するだろうか。自分の意見を正確に伝えて提案を通すためとか、自分の思考を客観的に整理できるからとかいろいろ理由はあるだろうが、私は「人と議論ができるようになるから」だと考えている。自分の考えを理解させる、人を動かす、説得する、納得させる、これらすべて一方的に“伝える“だけでは実現できない。いずれも、疑問や懸念をぶつけ合ってそれを解消して初めて理解されるし人を動かすこともできると考えている。要するに議論をしないとなにも始まらず、言語化する能力が低いと議論ができない。もし社内に言語化する能力の低い部下がいる場合、伝えることを意識してもらうよりも、議論することを意識してもらう方がいいかもしれない。

MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太

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