1.アナリスト
印刷“ありき”で考えないことの難しさ
2022-07-01
私は7月より、公務員という立場を変え入社した。
行政機関との違いとして、MAVISで勤めていく上で、常に意識しておきたいことは、「“ありき”で考えないこと」である。
公務員的“ありき”
一定の役職に就くまでの公務員というものは、良くも悪くも政策(ここでは意思決定と捉えた方が分かりやすい)に対して疑問を持つことがない。というよりも疑問を持っても意味がない。今後日本をどうしていくか、という意思決定はすでに“上”で決定されているものであり、一端の実務担当者として覆されるものではなく、政策に紐づく各施策に対し、どうやって理屈をつけるのか、どうやって対外的に説明するのか、という業務が主となる。言い換えれば、YESとNOの道があり、YESであることの正当性を証明することが仕事であった。YESという方向は選挙を通じて民意で決められるものであり、仕事の性質の違いであるので、否定する意図はないものの、YESという方向が本当に正しいのか、適切に評価したいという気持ちは忘れないように心がけてきた。一方で、膨大な調整業務の中でそこに思考を割くことは無駄であるとすら感じていたことも事実だ。この公務員的思考の癖を「“ありき”で考える」ことであると思っているが、MAVISに身を置いたからには思考転換が必要だと感じている。
NOを同等に評価する
「“ありき”で考えない」ことはなかなか難しい。例えば、クライアントから「〇〇をしたいのだがどう思う?」と聞かれた場合にはYESの理由を考える方が労力を割かない。アイデアベースの話は別だが、相談いただく時点で、定量的な指標はないにしても、YESとなる理由、それなりの収益モデルや社会的意義を頭にイメージされていることが多いのではないかと思う。そして、これらは各社で経験を積まれてきたクライアントの提案であるため、的を射ているらしいものが多いはずである。この場合、(少なくとも公務員時代はそうせざるを得なかったのだが、)YESを前提に中身を精査し、綺麗に紙に起こしなおし、NOである場合の選択肢を数個程度用意し、反論できるようにしておくことで、最終回答とすることもできる。しかし、コンサルタントとは、YESもNOに同等の可能性があるという前提で各案件を評価するべきだ。NOを同等に評価するということは、ステレオタイプから脱却し、クライアントが考えている課題や方針の部分も含め、前提に疑問を持ち、NOであることを証明しなければならない。これをYESである場合と比較しながら平行して進めていくことが「“ありき”で考えない」ことであり、時間も労力も必要とする難しい点であると認識している。最終的なYESかNOの選択権はもちろん各社にあるが、提案段階の中では、クライアントにNOの選択肢の考え方、妥当性を示すことは非常に重要であると考えており、そのような提案ができるようになるには、クライアントより特定領域の専門性は劣るが、コンサルタント一人一人経営者と同等の素養や先見の目、それらの吸収できるコミュニティを持つ必要があるのだろう、と感じている。
MAVIS入って
MAVISの「M&A仲介単体の支援は行わない」ことは、M&A“ありき”にならないための方針と理解している。入社して間もない私だが、思考の癖は怖いもので、早速「“ありき”で考えない」ことを意識する場面があった。いつでもこの意識を忘れないように、立ち返る場所という意味も込めて、最初の執筆をこのテーマにさせていただいた。M&Aとは手段であり、目的・ゴールではない。各案件に対して、フラットな目で評価する。心強い先輩方にご指導いただきながら、クライアントに本当の価値をもたらせるコンサルタントになれるよう、研鑽に励む。
MAVIS PARTNERS アナリスト 神尾唯