3.マネージャー
印刷プロセスエコノミーという考え方は新しいのか?
2021-12-10
プロセスエコノミーとは?
プロセスエコノミーという単語を聞いたことがあるだろうか?私自身は、今年の3月くらいにサッカー元日本代表本田圭佑氏が「プロセスエコノミーがこれから爆発的に来る気がする」というような趣旨のツイートを見て知った言葉である。もともとあった言葉ではなく、とあるベンチャー起業家が作り出した言葉らしい。概念としては「モノ自体ではなく、モノが作られるプロセスそのものを売る新しいビジネスモデル」のことである。この考え方の根底には、製品やサービスなどのアウトプットはマネが出来て類似品やレプリカ、コピー製品を作り出すことが出来たとしても、モノを作り出す過程(どんなことにこだわって作っているのか、とかどんな試行錯誤をしているのか)はコピー出来ないから価値があるという思想がある。プロセスエコノミーをわかりやすく理解するために、言葉の生みの親であるベンチャー起業家は「アウトプットエコノミー」という対立概念を作り出して説明していた。詳細な説明は様々な書籍が出始めているのでそちらに譲るとして、本日はこのプロセスエコノミーと弊社の生業であるコンサルティングの類似性について感じたことを書きたいと思う。
プロセスエコノミーとコンサルティングの共通点
プロセスエコノミーという言葉自体は新しいが、プロセス自体に価値がある、というのは昔から無意識的に認識されていた気がする。例えば、AKB48のコンセプトは「会いに行けるアイドル」だが、これは自分の推しのアイドルが成長していく様に課金してもらうことと同じだと思う。さらに遡ると、私が小学生の頃に放映していたASAYANという番組でやっていたモーニング娘のオーディションなんかも、似たような考えが根底にあると思った。
というわけで、プロセスエコノミーという言葉を聞いた時に、私は、「なるほど、言葉自体は確かに新しく、プロセス自体をマネタイズすることを意識的にやっていくというのは新たなビジネスモデルだな。ただ、ファンを増やすためにプロセスを公開するとかプロセス自体を番組というアウトプットにしてしまう、というこれまでの考え方の進化版に近いな」と思った。そして、「これってコンサルティングと似ているな」とも思った。コンサルティングも最終的にはなにかしらアウトプットに価値を感じてもらって対価を得ているわけだが、私はアウトプットだけではなく「こういう考え方もしてこういう議論も内部で重ねたけど、結果的にこれが一番ロジカルだと思う」という思考プロセスをクライアントに伝えるよう意識している。また、提案の時にも、「こういうアウトプットを出します」と詳細まで決まったものを確約することはほぼ不可能なので、「こういうステップで検討していけば答えが出せると思う」というプロセスが重要になる。
もちろん、正確に言えばコンサルティングもアウトプットに期待されて対価を得ている「アウトプットエコノミー」であることは理解しているが、「プロセス自体に価値がある」という思想自体はコンサルタント(少なくともMAVIS)が大事にしている考え方と同じだなと思った。
プロセスエコノミーの根底にあるもの
プロセスエコノミーがここまで注目を集めた要因の一つには「アウトプットに差がなくなっている」ことが社会の共通認識になってきたことがあるのだろう。アウトプットに差がなくなっているから、「どんな思想で事業をしているのか・どんな想いでアウトプットを生み出そうとしているのか」というストーリーを語らなければ差別化できなくなってきていることと同じだ。これは昨今よく言われているパーパス(存在意義)経営が重要視されている背景ともリンクする。プロセスエコノミーが今後ベンチャーだけではなく大企業でも事業化されるのかもしれないが、その時には、ただ単にプロセスを公開するという形式だけをまねをしても意味がなく、なぜそのプロセスを取っているのかという企業の理念や思想自体が共感されなければマネタイズできないのだろう。改めて気づかされた。
MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太