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EQの改善が意思決定エラーを減らす?

2025-06-06

EQの改善が意思決定エラーを減らす?

EQがなぜ注目されるのか

皆さんは「EQ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。いわゆる「IQ」は頭の良さを測る知能指数として広く知られているが、近年「EQ(心の知能指数)」が注目されることも多い気がする。EQとは、自分や他人の感情を認識し、適切に制御・活用する能力を指すらしい。

ビジネスの世界では、ロジックが全てのように見えて、実際のところは人間関係やコミュニケーションを円滑にする能力、あるいは他人の感情の機微を感じ取った上で適切なアクションを行う能力が成果に直結することも多いだろう。特に営業のような対人サービスを行う職種だけでなくとも、社内で上手く他者と連携しながら仕事をするには必須だ。

そもそも、人はロジックだけで物事を判断し、行動をするわけではなく、感情的な要因が人を動機付けていることが多い。普段の生活を振り返れば誰しも共感できることだろう。人間の知能が完璧な答えにロジカルに辿り着けるはずがないので、感情のように「今そこにあり、間違いのない要素」に基づいて動いた方が合理的だという考えもあるかもしれない。

また、生成AIの発展スピードを見ていると、人のIQはAIに全く適わなくなる時が近い将来に来るだろうとも思う。プログラミングのような「ロジックを機械が理解できる言語に落とし込む仕事」はすでにGAFAのような企業でもAIによる代替が進んでおり、日々リストラのニュースが流れている。

一方で、相対的に人間が持つ感情認識や対人スキルといった要素は、AIとの差別化要素として重要性を増すのではないだろうか。営業や交渉といった領域では、相手の感情を読み解く微妙なスキルが不可欠であり、AIが置き換えにくい分野とされている。(実際にはすぐに代替されてしまうかもしれないが)

攻めのEQと守りのEQの違い

例えば、EQは具体的には「攻めのEQ」と「守りのEQ」という二つの視点で分類することもできるのではないだろうか。「攻めのEQ」は、他者への共感力や相手の感情の微妙な変化を察知し、それを交渉や説得などの積極的な行動に活かす能力だ。これが高い人は対人関係での成功率が高く、営業活動やマネジメントにおいて優れた成果を出しやすい。

一方、「守りのEQ」は、自分自身の感情を冷静に制御・管理する能力である。人は誰しも、驕りや怒り、嫉妬、焦りといった負の感情を持ち合わせており、ハードな環境で仕事をしていればこのような感情に支配されることもあるだろうが、そうすると判断力が鈍り、重大なミスを犯す可能性が高まる。

ドラマ地面師たちの中で住宅メーカー「石洋ハウス」の開発事業部長だった青柳が自身の焦りと功名心から、怪しい不動産取引を強引に進めるシーンがあった。結局は巨額の不動産詐欺だったことが判明し、青柳は茫然自失の中で事故死してしまう。これも負の感情に支配され、致命的な意思決定エラーを起こした例と言える。

感情コントロールがもたらす意思決定の改善

感情コントロールは、意思決定に大きな影響を与える。特にストレスやプレッシャーの高い状況では、負の感情が強まるほど視野が狭まり、情報収集や冷静な分析が困難になる。負の感情に囚われると、性急な決定や短絡的な行動に走りやすくなり、後々重大な結果をもたらすことがある。

逆に、自らの感情を客観視し、適切にコントロールできれば、感情を戦略的に活用し、合理的かつ的確な意思決定が可能になる。感情は人間の判断において避けられない要素であるため、完全に排除することは不可能だが、意識的にコントロールし利用することはできる。

日常生活の中で、自分の行動や意思決定に影響を与えている感情は何なのか、逐一問いかけてみる訓練が有効かもしれない。ちなみに私自身は、常に冷静でいることを意識しすぎていたのか、新卒で入った会社の上司から違和感を持たれ、「感情を引き出すセミナー」みたいなものに行かされそうになったのでやりすぎは禁物である。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 松村寿明

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