3.マネージャー
印刷子供に絵本を読みながら考える“良い問い”の定義
2025-05-30

子供が飽きる問いと、楽しむ問い
私にはまもなく2歳半になる子供がおり、夜寝る前に絵本を読むことがある。
子供から「読んで~」とせがまれて読むことも多いのだが、それでも読んでいる途中で子供が飽きてしまったり、読むことよりもページをめくることに熱中してしまったりする。
せっかくならば絵本の内容を楽しんでもらいたいと思い、ただ読むだけではなく「これ何かな?」という質問をしながら読んでみたことがある。すると最初は「くまさん!」とか「アンパンマン!」とか答えてくれるのだが、それでも質問自体にすぐに飽きてしまうことも多い。そこで、「これ何かな?」的なクイズ形式の質問ではなく、「このくまさん何しているのかなあ?」とか「この子なんで寝んねしているのかな?」というような子供が好きに何とでも答えられる質問にしてみた。そうすると、「くまさん、ごはんたべてるねぇ!」とか、「ねんねしないで!おきてー!」とか反応して、絵本の世界にのめり込んでくれた。
子供にとっての“良い問い”
子供との絵本体験から、“良い問い”の定義ができるのではないかなと考えてみた。最初にしていたような「これ何かな?」的なクイズ形式の問いは、いわゆる正解がある問いである。正解がある問いは、子供が自由に考えたり、解釈したりする幅が狭いので飽きてしまうのではないかなと考えた。一方で、「何しているのかな?」系の問いは正解がないので子供が自由に考える余地があり、考えること自体が楽しいのではないかと考えた。要するに、「何しているのかな?」系の問いは、“子供との対話”が生まれる問いなのである。ある程度具体的に聞きつつも、答えがない問いので対話が生まれる問いが子供にとっての“良い問い”なのかもしれない。
「具体的で答えが無い」問いはビジネスでも“良い問い”か?
「具体的かつ、答えがない問い」は子供にとっての“良い問い“であるだけではなく、ビジネスの世界でも同じ傾向にあるかもしれないと感じた一方で、ビジネスの世界だとそれだけではないだろうなと同時に思った。
例えば、「なぜ今回のTVCMの好感度は高い/低いのか?」とか、「この新規事業がスケールしない原因はなにか?」という問いがあったとする。これらの問い自体は、何を答えなければならないか明確、という意味である程度の具体性があるし、どこまでいっても“最も確からしい答え”しか出せないので“答えがない”と解釈することができる。
ただし、じゃあこの問いが“良い問い”かと聞かれると、あまりしっくりこない。確かに答える意味がある問いだとは思うし、実際に論点として解くことはするのだが、会議でクライアントとの対話が生まれたり、盛り上がったりするイメージが湧かない。
ビジネスの世界での“良い問い”
これまでの経験で、どんな問いがクライアントとの対話が生まれたり、盛り上がったりしたかなと思い返すと、例えば「なぜ今回のTVCMの好感度は高い/低いのか?」ではなく、「誰をターゲットにしたTVCMを展開すべきか?」とか、「誰からの好感度を獲得したいのか?」という問いの方が盛り上がった。あるいは、「この新規事業がスケールしない原因はなにか?」だったら、「新規事業をスケールさせるために必要な取り組みのうち優先度の高いものはどれか?」という問いの方が盛り上がる気がする。いずれも“具体的かつ、答えがないだけではなく、答えられればアクションにつながる問い”なのである。
子供にとっては、“対話”自体を目的捉え、子供が自由に考えることができる「具体的で答えのない問い」が良い問いなのだが、ビジネスでは対話すること自体が目的なのではなく、対話の結果、合意を得て、事業の目的達成に向けたアクションにつなげることが目的なので、「具体的で答えがないが、答えられればアクションにむすびつく問い」が“良い問い”なのだと思う。
この“アクション”という視点が結構若手コンサルタントには抜けているように感じる。(「具体的ではなく抽象的で答えられない」とか、「具体的だが答えが一つしかなくてつまらない」という問いの場合もあるが・・・)
子供の絵本読み聞かせから、コンサルタントという仕事に思いを馳せ、子供に対しても仕事でも“良い問い”を投げかけられる存在でありたいと思ったのでした。
MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太