1.アナリスト
印刷手段と目的をはき違えるな!
2024-11-29
背景、目的、手段
日本国内にはいわゆる青年団体と呼ばれるものがいくつかあるが、そのうちの一つが青年会議所、通称JCである。正式名称はJunior Chamber Internationalで、世界112か国が加盟し、27万人以上のメンバーが在籍している。私は3年前から一般社団法人五泉阿賀青年会議所に所属をしており、地域の街づくりのための活動をしている。月に一度理事会が行われ、各委員会が担当する事業について、ロバート議事法に基づき何度かの協議を経たのち、審議承認を持って事業の実施が許可される。事業を終えた後は報告議案として収支決算や反省点を理事会にて報告する。このようにしてJCにおける一連の事業は成り立っているのだが、この理事会に提出する「議案」を作成することがJC活動の大きな特徴であると言える。まずその地域の背景があり、それに対して果たしたい目的を設定する。そしてその目的を達成するための手段を検討する。その目的を果たす手段こそ、JCの事業でなければならない。例えば地方部の人口減少が背景にあるとする。その人口減少を食い止めることを目的として、地域の若者にその地域のよさを知ってもらえるような事業(手段)を展開する。これこそJCで大切にされている背景、目的、手段の論法である。よくある話として、委員長が実施したい事業を展開するために、手段と目的を混合してしまうケースがある。その事業の実施が目的となってしまい、肝心の実施目的や背景を置き去りにしてしまうという場合である。このような議案を理事会に提出してしまったものなら、演台に立った委員長は理事からの指摘の嵐、大顰蹙を買い、まさに針のむしろ状態になってしまう。理事会が炎上してしまう最もよくある光景である。私はこのJCのスタイルが、プロジェクト運営の基本であると考えており、JCに入会した人なら誰でもプロジェクト運営について学べることは、JCの大きな利点の一つであると考えている。
作ること自体が目的だった?
もう一つ、例を挙げる。議員になる前の経験だが、地元商店街有志とともに誘客マップを作製することとなった。当時、市内に新たに誕生したランドマークである「ラポルテ五泉」を五泉市の玄関口と定め、そこから2キロほど離れた市街地へ観光客を導くための商店街マップであった。作製が終わり製本され、1000部がラポルテ五泉に置かれることとなったのだが、私は衝撃を受けることとなる。市税を150万円も費やして完成されたマップであるのにも関わらず、なんと効果測定をしないのである。民間企業であれば、投資分に対してどの程度リターンが得られたのか、その検証を重ねて次の事業や投資を行うことが当然である。しかしこのマップにおいて、どの年齢層が、またどこから来た人が手に取ったのか、そして手に取った方がどの程度市街地へ導かれたのかといった効果測定をされることは全くなかった。マップを完成させ、置くことがゴールだったのではないか。これではこのマップが市民全体の利益になっているか判断できず、市税の使い方として相応しくないと感じた。このような行政の体制を変えたいと決意したことは市議となった理由の一つであるが、ここではその話はさておき、手段と目的をはき違えているのではないか?と思わせる経験であった。
手段と目的をはき違えるな!
M&Aは手段であって目的ではない。弊社代表が常々申し上げていることだが、M&Aに限らず、目的と手段をはき違えるな、ということだと痛感する。クライアントが求めるリソースは本当にM&Aをしなければ手に入らないものなのか。M&Aをしたあと、当初見込んでいたシナジーをしっかりと創出できそうなのか。M&A自体が目的となっていないか。私は入社後すでに5つの案件に携わったが、常にM&Aは手段であって目的ではないことを念頭に置いて、クライアントとコミュニケーションを取ってきた所存である。これからも手段と目的をはき違えることなく、弊社での業務にあたっていきたい。
MAVIS PARTNERS アナリスト 大橋建太