4.プリンシパル

印刷

正しい練習の仕方

2024-09-13

正しい練習の仕方

まずはゆっくり弾けるように

私には子供が二人いる。8歳の男の子と5歳の女の子。妻がピアノを幼少の頃から習っていて、私も音楽を多少かじっていた経験があるので、子供二人にはピアノを習わせている。私は、「趣味程度に自分の好きな曲が弾けるようになればいい」程度に考えていたが、妻は、「せっかくやるなら、自分の得意領域にさせてあげたい」という思いがあるようだ。
それもあって、子供二人には「ピアノの練習時間」というものが毎日課されている。といっても、1日10分で終わってしまうこともあるので、スパルタ教育という程ではないが、毎日練習しているおかげか、今年のコンクールでは二人揃ってそれなりの成績を残した。見聞きした限り、練習時間は周りの子供よりも相当少ない方だが、それでも毎日の練習の成果もあって、それなりに上達したようだ。
別に、親が音楽をやっていたから、その才能を受け継いだとか言いたいのではない。ただ、親が音楽をやっている場合と、そうでない場合で、明確に練習のさせ方に違いはありそうだとわかった。話を聞いたところ、音楽をやっていない親は、弾けないフレーズを何度も反復練習させていた。1フレーズに2時間も練習させることもあるそうだ。一方、私も妻も、「とにかくゆっくりでいいから、楽譜通りにまず弾けるように練習しなさい」と同じことを言う。
特に子供はそうなのだが、自分が弾ける部分はインテンポで弾き、弾けない部分は躓いたり、やたらとゆっくり弾いたりしてしまう。それで「最後まで弾ききった」というドヤ顔をするのだ。それに対して、私も妻も、「いやいや、ゆっくりでいいから、同じテンポで正確に弾けるように1つずつ練習しなさい」と言っている。右手だけ、左手だけ、そして、両手で。1つずつ。それが出来てから、ようやくテンポを上げて、細かいところを仕上げていく。

まずは時間制約がなかったら出来るように

よく考えると、この練習の仕方は、仕事でも同様だったなと思わされる。
プレゼンをするにしても、急に流暢に説明できるようになることは難しい。だから、まずは言いたいことをしっかり整理して、自分の言葉で書き出す。それを説明しやすくするための資料を1枚1枚考える。そして、何も見なくても紙芝居のように話せるように口に出して練習する。最後は、実際の尺を想定して、リハーサルをしてみて、細かいところを調整しておく。1つ1つ段階に沿って、仕上げていくのだ。
また、会議における議論もそう。急に意見を言おうとしても、良いことなんて言える可能性は低いのだから、裸で議論に望む前に、まずは何が論点になりそうかしっかり見立てておく。それら論点に対して、現状の仮説を持っておく。そして、意見を言った後の展開まで想定しておき、それらに対してのコメントも考えておく。あとは、どのタイミングでカットインすべきか想定しておくとベターだ。これも1つ1つ仕上げていくイメージだ。
つまり、これらは、時間的制約を緩和させてしまって、やるべきことを要素分解して、1つ1つ詰めていくといった方法だ。これは、ピアノで、初見で弾けない曲にチャレンジするときに、まずはテンポを無理ない範囲に下げて、右手、左手、そして両手を順番に仕上げていく練習方法と似ている。ピアノでも、仕事でも、ゆっくりやっても出来ないものは、本番で出来るわけがない。急にインテンポで全て完璧にやろうとすることに無理があるのだ。
これまで、音楽経験は、仕事に対して、集中力やこだわりという点で活かせるものがあるのかなと思っていたが、最近は、物事の取り組み方や、練習の方法といった部分で、実は通用している部分があるのではないかと思う。これは音楽に限らず、運動や競技スポーツでも同様だと思うが、やはり何かしらの領域で努力した経験というのは、その後の人生に副次的に役立っているのだろう。何事も努力の結果に無駄は無いのだなと思わされる。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴

Contact

お気軽にお問い合わせください

お問い合わせフォーム