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記録よりも記憶に残ろう

2024-08-09

記録よりも記憶に残ろう

ビジネスの世界では記憶よりも記録?

「記録よりも記憶に残る」というフレーズはスポーツの世界でよく言われる言葉で、現:日ハム監督の新庄さんが現役時代に言った言葉として知られている。調べてみると、落合博満氏が現役時代に「記録に残れば記憶にも残るだろ」と発言したり、「記録の王に対し、記憶の長嶋」みたいな対比で使われたりしていたらしく、必ずしも新庄さんが作った言葉ではないらしい。いずれにせよ、プロスポーツの世界ではよく耳にする言葉だ。
しかし、ビジネスの世界では記憶ではなく記録に残ってこそなんぼだ、という考えもある。特に、営業だと、営業成績1位を取ったとか、月間のノルマ達成を24か月継続したとか、XXか月連続ノルマ達成率300%とか、社長賞受賞とか、最年少XXXとかわかりやすい記録を達成していると「この人は優秀なんだな」と思われやすい。
また、記憶はあいまいなので記録に残さなければならない、という考えもある。これは、会議での重要な発言は確実に議事メモに残しておこうとか、検討の証跡は全部後で振り返って確認できるように残しておくとかそういうことだ。
ビジネスの世界では記憶よりも記録。間違ってはない。

実際に過去を振り返ってみて

ただし、皆様も過去を振り返ってみるとどうだろう?振り返って、いい仕事したなとか、楽しかったなとか、またあの人と一緒に働きたいなと思い出すのは必ずしも“記録を残した仕事“ではなく“上司から言われた記憶に残る言葉”だったり、“お客さんとの記憶に残るエピソード”などがあるのではないだろうか。
私が証券会社に入って仕事に慣れず悪戦苦闘していた時に、当時の上司に、「自分が一人で証券会社をやっている“渡邊証券“だと思え」と言われたことがある。つまり、会社に何を言われても自分の意志で決めろとか、自分のやることに責任をもてという意味だ。仕事に対する姿勢を教えられ、記憶に残っている。別の先輩からも「自分の意思をもって仕事をしろ」と言われたことも今でも記憶している。当時最もかわいがってくれたお客さんから「僕の信念はgive、give、giveだ。すぐに見返りなんか求めない。とにかく人の役に立ち続けるとそれが何十年か後に返ってくる」と教えてくれた言葉も「こんな資産家はそんなに長い目線で物事を考えているのか」と若い私は純粋に感動した。
コンサル会社に入って「コンサルタントは大きな船を動かす仕事だ」と言われたこともすごく記憶に残っている。その人曰く、「ベンチャーで働くと、意思決定が早く小回りが利くからすぐに軌道修正できてスピード感を感じることができる。でもいくら動いても波は小さい。大きな船は多くの人を納得させないと方向転換するのにも時間がかかる。多くの人を納得させるのに理論武装も必要。ただし、方向転換した時に立つ波の大きさはベンチャーの比ではない。だからコンサルの仕事はインパクトが大きい」と言われてコンサルタントという仕事を理解した。
こういった記憶に残るフレーズやエピソードがある人との仕事は楽しかった。その仕事単体ではどこまで会社としての記録に残っているかわからないが、個人的にまたあの人たちと仕事がしたいと思う。

コンサルタントこそ記録よりも記憶

考えてみると、コンサルタントこそ記憶に残ってなんぼだと思う。マネージャーになり数年たち、任せてもらえるプロジェクトの数が増えて、本当にそう思うようになった。そもそもコンサルタントは主役ではない。クライアントがやりたいことを支援するパートナーであり、あくまで主役はクライアントだ。なので、コンサルタントの仕事は“渡邊がやった仕事”として記録には残りにくい。とはいえ、クライアントの記憶の中には「あの時渡邊君こんなこと言ったよね」とか「あの時一緒にこんな議論したよね」という記憶が残っていて、その記憶を頼りに次の仕事も相談してくれる。だからこそ、毎回の定例会で1つでも記憶に残るような発言をしたいなと思うようになった。記憶への残り方は真摯に仕事に向き合って“キラーフレーズを残す”だけではないと思う。一緒にお酒を酌み交わして本音をぶつけ合うのもそうだろうし、過去にはクライアントと一緒にジムで筋トレをするなんてこともあった笑。どのような方法でも良いが、自分の記憶ではなく、“相手の記憶に自分を残す“ということがいかに大事かを最近感じている。

MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太

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