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引き出す能力

2024-06-07

引き出す能力

クライアントからの相談と提案活動

クライアントが発注先を選ぶとき、まずは初回面談して、依頼事項をコンサル会社に伝えて、コンサル会社がその内容をもとに提案書を作り、後日提案する。クライアントは、複数の提案内容を受け取り、その中から最も自社にふさわしいものを選ぶ。そこで選ばれなければ、発注されないし、お仕事には繋がらない、そこで終了。だから、コンサル会社にとって、提案活動は収益の源である。いくら経歴がピカピカで有能なコンサルタントが豊富にいる会社だろうと、仕事がなければ、その能力を活かす場もない。
なので、これまで提案活動は真面目にしてきたほうだ。絶対とる!と意気込んでいる時は、コンペの勝率はべらぼうに高かった。他社がやらないような執拗な事前ヒアリングをしていたし、提案も複数回に分けて、ジリジリとクライアントのニーズを掴んだ。その執念が案件に対する熱量となり、決裁権限者にも伝わったのかなと、振り返ってみて思う。「真面目に提案していれば、今回ダメでも、次また呼ばれるから」と、昔、お世話になった先輩コンサルがよく言っていて、なるほどと思い、それをポリシーにしてきたのが良かったのかもしれない。

発注者側の力量

一方で、これまでたくさんの提案の場を経験してきて思うのは、発注者側が協力的、協働的じゃないと、適切な発注先は選べないのではないかということ。「相談したい」と言うので、面談に行ってみると、特段何か資料が用意されているわけでもなく、「御社のサービス紹介をしてください」と言うだけの企業もあった。仕方ないのでサービス紹介しつつ、相談内容をヒアリングしようと質問すると、「現時点では詳しく言えないので」とお茶を濁される始末。結果、大した会話もできず、サービス内容についての質問もなく、サラッと終わってしまった。
「せっかく行ったのに、あれは何だったんだ?」と思いながら、しばらく数日過ごしていると、急に「慎重に検討した結果、今回は他社にお願いすることにしました」というメールが来た。私からしたら、「え、提案もしてないし、相談内容もよく聞かされてないのに、何を見て評価したの?」と不思議でしょうがなかった。結局、BIG4の大手コンサルファームに依頼したそうだが、あの面談の何が決め手だったのか未だによく分からない。特に失礼なことを言った記憶もないし、変なこともしてないと思うのだが……。

まずは引き出す、そして評価

これを反面教師として、私が発注側の立場で、発注先を選ぶときには、先方の能力をしっかり引き出してから評価しないといけないと思わされる。ただサービス紹介してもらって、後で勝手にあれこれ考えて、発注先を選ぶというのは、相手の外見しか見ていないようなものだ。この人はどれぐらい貢献してくれるんだろうか?ということを測るのであれば、選ぶ段階で議論が必要だと思う。今困っていることをしっかり伝えて、あなただったらどう考えるか、どうするかを問う。そして、その回答を基に、一緒に考えてみてもいいだろう。
そうじゃないと、相手の力量は正確に見極められない。相手のポテンシャルを引き出した上で、評価するという工程が重要なのだ。それは面接でも同じ。一方的なレジュメの説明だけ聞いて、表層的な質問だけして、相手を分かった気になって、評価するというのは恐ろしく愚かだと思う。社内会議もそう。部下が作ってきたものを適当にざっと見て評価するのはナンセンス。その背景に何があるのか、言いたかったことは他にないのか等、まずは“引き出す”こと。そのうえで、良否の判定をするべきだ。だって、机上のテストじゃないのだから。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴

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