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顧客心理の理解の重要性

2024-04-05

顧客心理の理解の重要性

ビジネスにおいて大事なこと

世間一般のビジネスにおいては、「顧客の求めることを期待以上のクオリティ、コスト、スピードで提供する」ことが求められる。後段のクオリティやコスト、スピードが重要な要素であることは言うまでもないが、その前段である「顧客の求めること」を精度高く把握できているかどうかも、負けず劣らず重要な要素である。例えば経営コンサルタントであれば、高い課題解決能力を持っていたとしても、顧客の課題を取り違えていれば顧客からは一切評価されないだろう。スタートアップ起業家が素晴らしい技術力で革新的なプロダクトを世に送り出したとしても、市場にニーズが無ければ一般消費者は見向きもされないだろう。逆に、ニーズを上手く捉えた製品やサービスさえ用意できれば多少クオリティが低くとも評価されたり、利用される可能性は残る。あえて文字数を割いて説明するほどのことではないかもしれないが、今一度その重要性を強調しておきたい。

顧客理解を深める手段

さて、「顧客の求めること」を精度高く把握する能力とはどういったものだろうか。顧客に直接聞くのが最も早いが、実務の場ではそう簡単にはいかない事情があることも多い。顧客から信頼を得ていなければ突っ込んだ話をしてくれないことも多いだろう。また、顧客が自身の求めることを正確に把握していないことも往々にしてよくあることだ。前者のケースでは、まずは信頼を得るきっかけづくりが重要となる。実務能力の高さをアピールする場合もあれば、人格を気に入ってもらう場合もある。後者のケースでは、私たちの方から顧客に関連するデータを収集し、それを踏まえて仮説を絞り込み、顧客とディスカッションしながら、「顧客の求めること」を明らかにしていく作業が求められる。私の前職であるM&A仲介会社では顧客であるオーナー経営者との面談前に、その企業の業績動向はもちろん、業界の動向や、競合の動きはもちろんのこと、オーナー個人の経歴や職歴、家族構成、ネット上のインタビューから分かる物事の考え方まで可能な限り調べ、「オーナーの求めること」の仮説を立てた上で、ディスカッションに挑み、短い時間の中でオーナーの役に立つ提案を行うことが求められた。M&Aに関わらず無形商材の提案型営業で求められる能力なのかもしれない。また、営業に限らず、マーケティングでも同じことが言えるだろう。自社の製品のターゲット層はどういった消費行動をしており、どういった考え方で商品を購入するのか具体的にイメージできなければ、売れる商品は作れないと勝手に理解している。

自分自身が顧客であることが最高の顧客理解

では、せっせとリサーチすれば顧客心理が完全に理解できるのかというと、そうでもないというのが私の考えだ。活躍したマーケターの中では、自分がターゲットとなるような商品しか担当しないという方がいるらしい。要は顧客心理の深い部分はその顧客にしか分からないという割り切りだ。
そういう意味では私はコンサルティング業には向いているかもしれない。自慢ではないが、プライベートの私はかなり面倒くさい人間である。例えば、昨年プロポーズをする際には、サプライズで渡す婚約指輪を選ぶために3か月もの時間をかけた。「ジュエリーブランドの格付け」「ダイヤモンドの評価方法」「各ブランドの設立から現在までの歴史」といった基本情報をはじめ、各SNSで女性が各ブランドに対してどういう印象を持っているか分かるコメントを収集してポジショニングを整理し、周りの人間にもヒアリングを重ね、各ブランドの店舗で試着をしてダイヤの輝き方を確認し、奥さんの性格も考慮して喜んでもらえる可能性の高い指輪をピックアップした。(もちろんサプライズで選んでしまうことのメリデメも検討した)今年の結婚式では、なぜ結婚式をするのか、無宗教の自分たちがキリスト教式の挙式を行う意味は何か、といった皆がどうでもいいと思うことをゼロから考えないと気が済まなかった。答えのない問いに対して、手間をかけてそれらしき答えを導き出そうとするその姿勢はプライベートでは面倒以外の何物でもないが、企業がコンサルティング会社を使って答えを出したいのはそういった答えのない問いであることが多い。そういう意味では、もしかすると自分はコンサルティング会社に発注するような顧客の心理に寄り添いやすいのかもしれない。もちろん、寄り添った上でスキルが伴わなければ意味がないのだが、、、

MAVIS PARTNERS アナリスト 松村寿明

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