1.アナリスト
印刷ヒョードル、ミルコはなぜ強かったのか
2024-01-26
日常の中に溢れる情報
自動車教習場に通うようになって道路標識に注目するように、外国語を学ぶようになって外国人の方々の会話が気になりだすように、MAVISに入社してから、企業の合併・買収に関する情報や広告が、今まで以上に私の関心を強く惹きつけるようになった。これは「視点が増えた」と言い換えることができるだろう。
例えば電車広告。私がよく乗車する電車には、(後に気づいたのだが)ある企業が頻繁に打ち出している広告があった。内容は近年徐々に増えているESG関連のM&A。偶然これらに関するリサーチをしていた私は初めてその広告を凝視した。そこで初めてこれまで頻繁に打ち出されていた広告を正しく認識したのである。良い情報が取れたと喜びに浸っていたのも束の間、これまで目には留まっていたものの、この広告が何に対する広告なのか知らなかった(知ろうともしなかった)事実に戦慄した。
道路標識、外国語での会話、M&A関連の情報に関しても昔から私たちの日常生活の中に溢れかえっている。情報の収集と理解を行うためには、それらの情報に適した視点が必要になる。確かにMAVISに入社する「前」と「後」で比べると私の視点は少しばかりは増えたが、昔から自身の視点を増やし続けている方々は多数存在している。彼らと徒競走した場合、現時点での私の勝率は限りなく低いだろう。
M&Aコンサルタントと総合格闘家の類似点
企業の合併・買収に関するプロセスの複雑や、多岐にわたる戦略的な取り組みを必要とすることからM&Aコンサルタントはしばしば総合格闘家に例えられる。相手を倒すための「技」を多数習得していることが格闘家としての強さに繋がるように、複雑な問題に対して最善手を打ち続けるための「視点」を多数習得していることがM&Aコンサルタントとしての強さに繋がるのだろう。
しかし、ここで最強の男としての呼び声が高かった2人総合格闘家の強さについて考えてみたい。
かつて「60億分の1の男」として表されていた総合格闘家「エメリヤーエンコ・ヒョードル」は寝技に特化した選手であり、彼を相手に組み技で挑むことは決して最良の選択とは決して言えず、そこで相手選手はいかにヒョードルに組み技を展開させないかという観点からゲームプランを立てていた。
その圧倒的な強さから「ターミネーター」と呼ばれていた総合格闘家「ミルコ・クロコップ」、彼は立ち技を得意技としており、こちらでもヒョードルの一連の流れと同じように相手方の選手はどうやってミルコ相手に組み技の試合展開を進めていこうかと考えることが必要であった。
2人の強さに習って
ヒョードルも立ち技が、ミルコも寝技が決して弱い訳ではないが、(どちらも世界レベル)彼ら自身の得意技のレベルがその他の技術を遥かに凌駕していたため、相手方の選手は戦う前から考えうる戦略の幅が狭くなる。これは総合格闘家として大いに価値があると言えるだろう。
ならばM&Aコンサルタントにおいても、ある一点の領域について特化していれば、それだけで価値があると言えるのではないだろうか。もちろん、金融、法律、ビジネス戦略、交渉術など多様な知識と技能を習得し、自身の視点を増やすことも大切である。しかしながら「○○関連のM&Aなら誰よりも詳しく的確に迅速に戦略を立てることができる」と言い切れるものが1つでもあるのならば、それはM&Aコンサルタントとして大いなる武器になり得ると考えられる。
もちろん、ここで言う武器の製造は今日明日でできるものではない。意識の上だけでも、今現在携わらせていただいている案件の「○○関連の領域」に限定した場合、この私が最も詳しく、また視点が深いと言えるほど日々の業務内容の突き詰めていくことこそが、冒頭説明させていただいた「所持している視点が多い彼ら」との徒競走における勝率を上げることに繋がるだろう。
MAVIS PARTNERS アナリスト 萬文哉