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数字に強いとは

2023-09-29

数字に強いとは

「数字に強い」とは、世の中でどういう意味で使われているのか?

よく「仕事のデキる人は数字に強い」とか、「数字に強くないとビジネスは理解できない」とか、あらゆる場面で「数字に強い」という表現が使われることが多いと思うが、「数字に強い」とはいったいどういう意味だろうか。
Google検索で「数字に強いとは」で検索すると、実に様々な定義が出てくるが、その中で目についたものを3つほど挙げる。
①数字の意味が分かり数字を使ってものを考えられる人のことを指す
②目に見えないものごとを数字で捉える能力
③第一に定性的な情報を数字に変えて表現できる具体化力、第二にその数字がざっくりとだせる比較力、第三に数字から示唆を見出せる抽象化力
例えば、「今月、従業員は忙しいか?」という問いがあったとして・・・
「事実を数字を使って整理することができる」というのが、②や③の1つ目で言っている力だと思う。今回の例であれば、「従業員1人あたり労働時間はXX時間で、過去1年間の平均よりも〇〇時間多い」「従業員への意識調査では、残業時間が△△時間を超えると労働意欲が低下することが分かっている」というような事実を整理するイメージだ。
そして、「整理された数字から示唆を出すことができる」というのが、①や③の2つ目3つ目で言っている力だと思った。今回の例であれば、「1人あたりの労働時間が〇〇時間増えると、残業時間は△△時間を超過するので、労働意欲の低下から離職率の悪化が懸念される」というような解釈がされるイメージだ。

事実から示唆を出せるか?は経験値も重要になる

上段で、「数字に強い」という言葉の意味を、「事実を数字を使って整理することができる」と「整理された数字から示唆を出すことができる」の2つに分解したとき、両者の身につけ方には若干の違いがあるように思った。
前者の「事実を数字を使って整理することができる」という能力は、ある程度ロジカルシンキングに長けていて、学校で基礎的な数学や統計学を学んでいれば、学生でも身に着けている人はいそうだなと思った一方で、後者の「整理された数字から示唆を出すことができる」という能力は、ロジカルシンキングはもちろんのこと、経験が物を言う世界でもあるなと思った。
最近、「企業の決算書や帳票から粉飾決算の有無をどう判断するか?」について、講義を受ける機会があったのだが、そのときにこのことは強く感じた。すごくざっくりと言うと、「決算書の数字と帳票の数字を見比べたときに、こういう部分に乖離が見られたら、粉飾決算を疑うべき」というような理論を学んだのだが、頭では理解できるものの、実際の決算書・帳票を前にするとなかなか実践は難しい。一方で、一緒に講義を受けていた人の中でも、普段から監査業務を行っているような人は、どこに粉飾の可能性がありそうか見極めるのが早かった。
振り返ってみると、コンサルとして普段業務を行っている中でも、似たような場面に遭遇することはある。クライアントから数値データをもらって、数字を整理し、第三者的な目線から示唆を出すということはよく行っているのだが、議論している中で、クライアント側から我々の気づかないような視点で新たな示唆が得られることもある。これは、コンサルからはみえない、クライアントが普段から見ている現場の状況や経験則が背景にあるからだと思っている。

数値分析では独りよがりにならないようにしたい

上記で述べたように、「整理した数字から示唆を出す」際には、ロジカルシンキングだけでは見落とす視点も存在するということは、普段の業務から忘れないようにしたい。数字を用いると、事実がわかりやすく整理されるので、どうしても「ロジカルに考えるとこうなるから、A社の経営状態はこうだ!」と決めつけたくなるが、そうではなく、見えている事実だけが全てではなく、実際の現場の状況や、現場をよく知る人の経験則も意思決定に向けた重要なインプット要素になりうるということを弁える必要があるのだろうと思っている。
ただし、それは示唆を出す部分を他人に丸投げするということでは無いとも思っている。コンサルの仕事で言えば、クライアントに丸投げするということでは無い。第三者的な目線で、事実とロジックだけで考えた場合の示唆というのは、逆に現場の状況に普段から触れている人ほど気づきづらいものもあるはずだし、そういった示唆をぶつけていくことはやっていかないといけない。
要するに、数字分析を行う際には、独りよがりになってもいけないし、丸投げになってもいけない。「自ら見える範囲の事実とロジックから、最大限出しうる示唆と、自身が持ち合わせていない経験を持つ人の持つ視点を掛け合わせることで、意思決定のための材料を揃えるべし」ということを忘れてはいけないなと思った。
本当に「数字に強い」人というのは、数字だけに踊らされない人なのかもしれない。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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