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全員が納得するルールは作れない

2022-12-09

全員が納得するルールは作れない

世の中にある様々なルール

最近、今後の資産形成とか、家や車の購入とか、お金に関わることを考える中で、世の中にある様々なルールに触れることが多くなった。ルールによっては、「こんなに補助金出るんだ。ありがたい!」となるものもあれば、「なんで自分は対象外なんだ!」とがっかりするものもある。ただ、お上が決めたルールなので庶民は抗えない。
会社の中にも様々なルールが存在しており、自分にとって好都合な部分があれば、不都合な部分もあると思う。中でも、人事評価制度は、一般社員が最も気にするルールの一つだと思う。そして、その仕組みひとつで、どのような人が出世するかも変わってくる。「絶対にあいつより自分の方が仕事できるのに、なんで先に出世するんだ」的な愚痴は、どこの会社でも多いだろう。

サッカーから感じるルール整備の難しさ

完全に自分の趣味の話になるが、今年は自分にとって、サッカーに関する重大な出来事の多い年だった。
私は地元のJリーグクラブであるアルビレックス新潟を応援しているのだが、今年めでたくJ2優勝&J1復帰(6年ぶり)を果たすことができた。また、今まさに盛り上がっているサッカーW杯では、日本代表が優勝候補であるドイツ代表とスペイン代表を倒すなど、歴史的な瞬間を目にすることができた。
アルビファン・サッカーファンとしては、激アツの1年となったのだが、その裏で、サッカーにおけるルール整備の難しさを感じるエピソードがあった。今回は、JリーグとW杯それぞれにおけるルールから、ルール整備の難しさを感じる事例を紹介したい。

Jリーグの話

まず、J1J2の昇降格に関するレギュレーションについて、すごく簡単に説明すると、J1の下から2チームが自動降格、J2の上から2チームが自動昇格することになっている。それに加えて、J1の下から3番目のチームと、J2の3~6位の中で1チームが、一発勝負のJ1参入プレーオフを戦って、最後のJ1残留・昇格枠を争うルールになっている。そして、ルールとしての難しさを感じたのは、このJ1昇格プレーオフである。
J1参入プレーオフでは、J2チームは勝たないと昇格できないのに対して、J1チームは引き分けでもJ1に残留できるのだが、このルールに対して、J2チームのサポーターからは、不公平を訴える声が多数出ている。私も、J2チームのサポーターをしていた身としては、J1寄りのこのルールに疑問を持っていた。一方で、J1チームのサポーターからは、レベルの高いJ1を戦っているチームに有利なルールは当然だという声が多い。たしかに、その言い分も分かる。
このJ1参入プレーオフのルールは、これまで数十年で何回も変更されているが、結局全員が納得するルール整備には至っていない。

W杯の話

次に挙げるのは、記憶に新しいカタールW杯で起こった出来事だ。
前回のロシア大会から、VAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)という制度が導入されている。これは、ピッチ周辺に設置されたカメラを使って、審判の判断をサポートするというもので、最近では、主要なサッカーの試合では採用するのが一般的になっている。
W杯の歴史を振り返ると、1986年メキシコ大会のマラドーナの”神の手ゴール”を始め、非常に多くの誤審が生まれてきた。映像を見れば明らかな誤審なのに、主審の目が絶対なので、判定は覆らない・・・。これによって数多くの苦い思い出を味わった、欧州諸国の力もあり、科学技術を駆使して誤審を防ぐ方向に動いていった。その結果生まれたのが、VARという制度である。
ところが今回、観ていた方も多いと思うが、日本代表vsスペイン代表の試合で、三笘薫がラインギリギリでクロスを上げて、VARチェックの結果、ボールは出ていないと判断された判定に対して、欧州諸国(特にドイツ)のサポーターや、イングランド元代表の選手から、「道徳的ではない」という批判が巻き起こったのだ。このゴールによって、強豪ドイツの決勝トーナメント進出が阻まれたからである。
欧州が中心となって作ったルールのはずなのに、自分たちに都合が悪い出来事が起こると、急に手のひらを返してしまう・・・。個人的にも非常に複雑な心境になった。

ルール整備時に持っておくべきマインド

結局のところ、論理的に考えれば正しい、全体最適になりうるルールを作ったとしても、それによって不都合を感じる人は必ず出てくるわけで、全員が納得するルールを作ること自体が無理ゲーなのである。当たり前といえば当たり前なのだが、それをサッカーを通じて、改めて感じることになった。
会社員をしていて、何かルールを作らないといけない立場になると、ステークホルダーが多ければ多いほど、様々な立場の人達を慮って、なかなかルールを決められないというケースも多いと思う。しかし、そんなときに、「全員が納得するルールを作ることは無理。誰かにとって不都合であって当たり前」というマインドを持つことは、検討していく上で重要だと思う。
また多くの場合、「ルールの枠組みに入る当事者だけで議論しても埒が明かない」ということも、認識しておくべきかと思う。そんなときに緩衝材になるというのも、我々のようなコンサル(外部の第三者)の大切な役割だと思っている。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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