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ハッピーストーリーを描く

2022-10-28

ハッピーストーリーを描く

共創型コンサルは難しい

コンサルタントといっても、世の中にあらゆるタイプがある。コンサル側が一方的に調査・分析して提言するようなタイプもあれば、クライアントの考えに寄り添ってクライアントを細やかにサポートするようなタイプもある。どちらも一長一短だ。前者の場合は、クライアントが思いつかなかったようなことを示唆してもらえる場合もあれば、クライアント事情を考慮せず、絵に描いた餅のような提案に留まってしまうことも少なくない。後者の場合は、「寄り添う」というと、親身に色々考えて支援してくれそうなイメージだが、「寄り添う」が、度が過ぎると、「言いなり」になり、ただ迎合するだけのコンサルにもなりかねない。

MAVISはどっちのタイプかというと、どちらのタイプでもない。理想論としては、クライアントと議論して、仮説をぶつけあい、新たな考えや見解に昇華させること。「なるほど、そういう考えがありましたね」、「確かにそういう見方もできますね」、「では、更にこんなふうに考えたらどうでしょう?」といった反応が来れば、これ幸い。いわば、「共創型のコンサル」を志向している。ただ言うは易しで、それを地で行くには難しいこともある。少なくとも、こちらにも「ぶつけるためのエッジのきいた仮説」を持っておかないとけないし、それがクライアントの仮説と違う場合、ぶつけ方によっては“破壊的衝突”になってしまうし、それを“建設的衝突”に持っていくことは、口で言うほど簡単ではない。

信じられるハッピーストーリーが必要

それに、コンサルタントとしての提言が経営者にとって耳の痛いことだったならばどうするか。言わなければならないが、経営者に雇われている身としては、正面切って「あなたがおかしい」と言いにくいのは事実。或いは、我々コンサルタントの提言が、仮に経営者のためになったとしても、クライアント株主のためにならなかったら、それは良いのか否か。はてまた、クライアント従業員のためにならなかったなら、それは許容されるべきなのか等。その点、我々コンサルタントは、誰のために考えるのか、誰のために働くのか、考えれば考えるほど、疑問が生じることも多い。

そう考えていくと、結局、コンサルタントが自分の思うハッピーストーリーを描けて、それを信じていないとダメだということに落ち着く。誰がどう言おうと、これが一番良い姿なんだと確信を持って、客観性を帯びた主観を持って、コンサルティングに臨まないと、クライアントと議論も出来なければ、クライアントとの利害関係に心が負けてしまう可能性がある。「クライアントがそう言ってたので…」は他責に過ぎない。誰がどう言おうと、これが今最良なんだと思い込めるほど、しっかり考えて、分析をして、更に意思が入ったものでないと、本当の仮説とは言えないのだと思う。

加えて、そんな自分の信じるハッピーストーリーが言いやすくなるには、財務的に困窮していないことが必要だ。お金が脳裏にちらつくと、「こんなこと言ったら、この契約取れないかな」とか、「クライアントはこうしたいから、こう言っておいた方が無難だな」とか、邪な気持ちが働いてしまう。人間なんて、窮地に追い込まれれば、振りかざした拳も簡単に降ろしてしまう。私は、そんな性弱説を持っているので、余計にそう思わされるのかもしれない。コンサル会社としては、財務的余裕を持ち、泰然とした構えでいられるようにすること。実はそれが、日々のコンサルティングの姿勢にも関わることなのではないかと思う。

マーケティングはしない

先日、他社の若手コンサルタントから、「MAVISはクライアントをどう獲得してるんですか?」と言われたが、先の理由から自社の財務体質には気を使っているものの、特別何かマーケティングをやっているわけではない。いくらかコストを払えば、いろいろなセミナーにも出られるし、ネット広告も出せるし、有名雑誌に告知を出すことも、社長インタビューのような形でメディアに出ることも簡単だ。しかし、そういった類のものは誘いがあっても全て断っている。無償だけど出てほしいとか、或いは、有償でお願いしますと言われれば、正味の実力が評価されてのお声がけなので、有り難くお仕事としてお応えしているが、こちらがコストを支払う、いわゆるマーケティングには全く手を出していない。

結局、なぜコンサルとして起用されるかといえば、クライアントが、私の信じるハッピーストーリーに価値を見出してくれるから。そして、私をそこに行き着くための”エンジン”として頼りにしてくれているから、だと思っている。とすれば、正味の実力以上に露出して、それが幸運にも仕事に繋がったとしても、長続きはしないと思うのだ。私の営業スタイルは、まずは弊社に関心を持ってくれた企業に、うちのやり方を知ってもらうこと。その上で、信じて託してくれたならば、精一杯頑張ります、ということに過ぎない。そして、私はこれがベストだと思います、というストーリーに誰からも価値を見出されなくなったときが、コンサルタントとしての引き際なのかなと思っている。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴

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