3.マネージャー

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意思のない人に存在価値はない

2022-07-15

意思のない人に存在価値はない

“優秀な人”とは?

仕事をしていて、必ずしも実力がとびぬけているわけではないのに、「この人優秀だなぁ」と思う人がいる。一方で、実力はあるにもかかわらずあまり目立たない人もいる。コンサルタントでも、入社したばかりでも活躍する人もいるし、何年たってもパッとしない人もいる。私が新卒入社した証券会社でも、要領がよいわけでもないのになぜか営業成績が良い人がいた一方で、知識もあって顧客からも好かれているのになぜか成績がパッとしない人もいた。皆様の会社でも同じだと思うし、社内ではなく社外の委託先や取引先にも思い当たる人がいるのではないか。果たして“優秀かそうでないか”は何で決まるのだろうか。(何をもって“優秀”と定義するかはおいておくと、)少なくとも、私が“優秀だな“と感じる人は、知識や専門性の高い人ではなく、イニシアチブを取ろうとする人だ。意思をもって主導権を握っている人。もっと言うと、ここだけは譲れないが、それ以外は柔軟に対応するような線引きのうまい人である。イニシアチブを他の人に譲ってしまうと良いアウトプットは出せないと思うし、計画通りに物事を進めることもできないし、何より人から信用されないと思う。

イニシアチブをとることの重要さ

数年前に、私が初めてそれなりの規模のプロジェクトのマネージャーとしてアサインされた時の話である。結論から言うと、その時のプロジェクトは全くうまくいかなかった。今振り返ると、当時の私はプロマネでありながらプロジェクト全体の主導権を握っていなかった。自分の考えに自信がなく、クライアントに言われるがままにアウトプットを修正し、社内メンバーへの指示も二転三転してしまっていた。些細なことだが、クライアントから「ここの資料の順番入れ替えて」とか「ここの記号は数字じゃなくてアルファベットに変えて」というような細かな指示にも全て応えていた。実は、コンサルタントの資料は全体の構成を考えて資料の並びを考えたり、見せ方を考えたりしているので、ちょっとしたスライドの順番の違いや見せ方の違いで全く意味合いが変わってしまうこともある。細かな依頼にいちいち応えていたら全体のストーリーの整合が取れなくなることもあるので、きちんと全体との整合を取りながら、「ここはクライアントの要望に応えるが、ここは譲らない」という線引きも必要なのだが、当時の私はそんなことを考える余裕がなかった。結果的に、そのプロジェクトは(もともと既定路線だったので)リピートにつながったのだが、プロジェクト終了時にはものすごく疲弊したし、メンバーにも負担をかけてしまった。
ただし、そのプロジェクトでも一つの学びがあった。とある会議で、準備が後手後手に回って資料作成が会議開始の直前までかかっており、十分な社内精査もできずに会議に臨むことになってしまった。会議開始の時点で、「もう今日の会議はどうにでもなれ」と絶望しながらスタートしたのだが、会議を始めてみるとクライアントが意外と私の考えた仮説を真摯に受け止めてくれ、いろいろとご意見をいただきつつ、一定の成果を得ることができた。この時の仮説はクライアントの考えとは違ったかもしれないが、「自分はこう思う」という意思を表明したことが良かったのかなと感じた。

小さなことからコツコツと

主導権をにぎることは行き過ぎると、エゴ、自己中心的、独りよがり、と思われかねない。そこの線引きは難しいのだが良い仕事をするのには「良いエゴ」が必要で、良いエゴを発揮するためにイニシアチブを持たなければならない。イニシアチブを持たなければ、自分がその仕事をする意味がない。クライアントの言いなりになってアウトプットを出すだけで、誰がやってもよい仕事になってしまう。これはすべての仕事に通じると思う。
とはいえ、「明日からイニシアチブをとることを意識してください」と言っても何をすればいいのかわからないと思う。私は、小さなことでも自分の意思を表明するクセをつけることが重要だと思う。例えば、クライアントとのミーティングの設定の仕方一つとっても、「私はいつでも大丈夫なので皆様の都合の良い日程を教えてください」という人と、「X月X日のX時はどうですか」と自分の都合の良い日時を指定する人がいる。前者の方がクライアントのことを考えているように見えるが、実際に受けがいいのは後者だろう。これも一つ、日程調整のイニシアチブをとっていることになる。こういった小さなことから少しずつイニシアチブをとるクセを身に着ける意識が“優秀”な人への第一歩なのではないだろうか。

MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太

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