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経験に頼らずに生きたい

2022-04-15

経験に頼らずに生きたい

ある意味全員未経験

今年に入ってから、中途採用の面談をする機会が多いのだが、その中で2人に1人くらい頻繁に質問されることがある。それは、「私はM&A実務もコンサルも未経験だが、御社(MAVIS)で活躍できるか?」という類の質問だ。それに対しては、「未経験でも活躍する人もいるし、そうでない人もいるので、人による。」と答えるようにしている。
最近見た動画で、サッカープレミアリーグのマンチェスター・シティの監督を務めているグアルディオラ監督がこんなことを言っていた。「経験があるから何だって言うんだ。その経験と全く同じことは起きないし、実際に経験が全く役に立たなかったことがほとんどだ。」
サッカーもそうだが、ビジネスの世界でも、常に何が起こるかわからない。仮にコンサルや、事業会社でのM&A実務の経験が豊富で、成功体験を持っていたとしても、その時のやり方が、今後も正しいとは限らない。
扱うテーマや業界が流動的なコンサルの仕事は、ある意味全員未経験とも言えるのではないかと、最近は思うようになった。

経験に頼ろうとして思考停止

とあるプロジェクトで、同僚からこんなフィードバックをもらったことがある。「井田さんは、過去やったプロジェクトで使った手法や考え方を引き出しとして持っているのは良いと思うが、無理やりそのやり方でやろうとして、他のアプローチを考えていないときがある。」この言葉を聞いて、自分が思考停止していたことに気づいた。
ゼロベースで検討して、結局行き着く先が、過去使った考え方の応用であれば良いのだが、最初から過去の経験を活用するスタンスで検討すると、無意識のうちにその経験に問題を当てはめてしまって、問題の本質から目が逸れてしまう。自分もコンサルタントを始めて何年か経つが、なまじっか経験を積んだために、油断すると思考の自由度が低下してしまう瞬間がある。
思い返してみると、これまでの先輩や、経験豊富な有識者の中でも、クライアントに「なるほど」と言わせるような示唆を出していた方々は、自分の経験を拠り所にはせず、あくまでも、その時の状況にあわせてゼロベースで考えていたように思う。

経験の焼き回しではなく、アナロジーが重要

上記で述べたような経験の焼き回しは危険だが、経験も使い方次第では、強力な武器になると思っている。
コンサルの仕事だと特にそうだと思っているが、常に自分事化して考えることが重要になる。コンサルの仕事は、クライアントの課題を解決することであるため、立場的には第三者なわけだが、「自分だったらどうか」という視点に立って考えないと、どうしても思考が浅くなってしまう。ただ、これは言うは易しで、全く土地勘の無い業界やテーマで、自分事化をしようとするとなかなか難しい。
そこで思い出すのが、「過去の自分の経験のアナロジーで、相手の立場に立つと良い」という上司の言葉だ。アナロジーとは、「すでに知っている分野の構造を借りてきて、まだしらない分野の構造にあてはめる」ことで、コンサルの仕事では非常に強力な思考方法だと感じている。例えば、クライアント企業のグループ間シナジーを検討するとき、MAVISと業務提携先のコーポレイト・ディレクションの関係性に置き換えて考えてみるようなことである。このようなアナロジー思考は、自分の思考を深めるのに非常に役に立つ。

経験に頼らない生き方

私自身は、特に事業会社で専門性を磨いたわけでもなく、特定のインダストリーに特化したコンサルをしているわけでもないので、今のままいけば、特定分野の専門家として、経験で食べていくことは難しい。ただ一方で、自らの経験そのものを価値として、それを提供することで生きていくやり方もあるが、個人的にはそういった生き方よりも、経験したことのないことに積極的にチャレンジする生き方をしたいと思っている。たしかに、いまからキャリアチェンジして、数十年特定の分野で経験を積み、業界有識者として生きることもできなくは無いと思うが、それよりも、未経験のことにチャレンジしていくほうが、飽きっぽい自分としては性に合っている気がするからだ。
いまは、M&A関連のご支援をさせていただくことが多いが、一口にM&Aと言っても、やはりケースバイケースで、考えなくてはいけないことが全く異なる。これまでのやり方にとらわれず、常に自由度の高い思考で、今後も仕事に臨みたいと思う。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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