1.アナリスト
印刷MAVISが提供する「サービス」
2025-04-04

接客という名の「サービス」
「サービス」という言葉を聞いて多くの日本人が思い浮かべるのは、丁寧な言葉遣いや細やかな気配りといった「接客」ではないか。例えば、日系航空会社のキャビンアテンダントは、乗客一人ひとりに笑顔で挨拶をし、乗客のお困り事や飲み物のおかわりなど、きめ細やかな要求に快く応じてくれる。まるで旅館のような、至れり尽くせりの対応は、「おもてなし」という言葉で表現され、日本文化の美徳の一つとして捉えられている。
一方、海外の航空会社を利用すると、その接客の違いに驚かされることがある。当然のことながら安全に関するアナウンスや必要なサポートはしっかりと行うが、日系のような過剰なまでの丁寧さや、個別の要望へ寄り添うといった柔軟な対応をしてくれそうな雰囲気はない。彼らにとって乗客は「輸送される存在」であり、キャビンアテンダントはあくまで「輸送業務を遂行する」という役割を担っているに過ぎないのだ。これは、航空会社を「サービス業」と捉えるか、「輸送業」と捉えるかの根本的な違いに起因するもので、日系が「お客様は神様」という意識で接客に重きを置き、他の航空会社との差別化としているのに対し、米系は効率性と実用性を重視し、輸送業として必要最小限の業務を遂行しているに過ぎない。
行き過ぎた「サービス」
しかし、この「お客様は神様」の精神が、近年、思わぬ形で負の側面を見せている。「お客様は神様」という言葉を顧客側が都合よく解釈し、過剰な要求を突きつけたり、些細なことで激昂したりする顧客、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化している。些細な遅延やミスに対して、従業員に土下座を強要したり、長時間にわたるクレームを繰り返したりする事例は昨今の世の中では枚挙に暇がない。中には、サービスとは到底呼べないような無理難題を要求したり、従業員の人格を否定するような暴言を吐いたりするケースも報告されている。このような行為は、本来の「サービスを受ける権利」を逸脱し、相手の人格や尊厳を踏みにじる許されない行為と言わざるを得ない。
背景には、日本社会における過剰なサービス提供が常態化し、「お客様は常に正しい」という誤った認識が一部で蔓延していることがあるのかもしれない。また、インターネットやSNSの普及により、個人の不満や怒りが拡散されやすくなり、それが一部の顧客の行動を助長している可能性も否定できない。「お客様は神様」の精神は、本来であればサービスを与える側が接客時に意識をすべきものであったのだが、一部の悪質な顧客にとっては、自身の不当な要求を通すための免罪符のように扱われているのである。
MAVISが提供する「サービス」
これまで触れてきた様々な種類の「サービス」が存在する中で、MAVISがクライアントへ提供すべき「サービス」とは一体何だろうか。当然のことながら、我々はクライアントにとっての最良のパートナーであれるよう、いつでも寄り添える存在を目指し最善を尽くしている。しかし、それだけではMAVISがクライアントへ提供しなければならない「サービス」の水準には達していないと考える。先日上長から、クライアントからの質問や確認に対して、「仰る通りです」と言いすぎないほうがよいと指摘を受けた。クライアントがMAVISに求めていることは私の同調ではなく、クライアントの理解を超えた部分の知識や示唆を提供し、それについて議論を重ねることで最終的にクライアントが抱える課題を解決することだからだ。MAVISは言うまでもなく接客業としての「サービス」を提供しているわけではない。クライアントのお困り事が解決できるように、時には会議においてクライアントの担当の方の耳が痛くなるようなことも言わなければならない場面があるかもしれない。しかしながらMAVISは、案件を任せていただいたクライアントの課題を確実に解決するために、侃々諤々の議論を厭わない。お互いに議論を交わし続け、最終的にクライアントの課題を解決することこそが、MAVISがクライアントへ提供すべき「サービス」なのではないかと、私はそう思う。
MAVIS PARTNERS アナリスト 大橋建太