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思考の同期化

2021-12-17

思考の同期化

チームワークの秘訣は、ともに悩むこと

コンサルタントとして働き始めて約4年、様々なプロジェクトで、検討を指揮する役割を担う機会が多くなっている。そんな中で、仲間と協同して検討をすすめる上で重要なのは、チームメンバーの思考を「同期化」することだと感じるようになった。
ここでいう「同期化」とは、プロジェクトを指揮する立場の人間と、一緒に検討を行うメンバーが、「いま何を考えなくてはいけないのか?」「そのために必要となる作業は何か?」について、共通認識を持つことを指している。
では、思考を「同期化」するにはどうしたら良いか?これには手っ取り早い方法は無く、とにかく一緒に悩むことが重要なのではないかと感じている。同じ課題に対して、一緒に頭を悩ませ、試行錯誤した時間が長ければ長いほど、メンバーが同じ方向を向くようになり、それぞれの行った作業や作成した資料の内容にズレが生じにくくなると考えている。
チームワークを行っている際によく生じる、「資料をいくら修正しても、上司に納得してもらえない」「がんばってリサーチをしたが、アウトプットが上司のイメージと異なり、大幅な修正を求められた」などといった事象は、思考の「同期化」が上手くいっていないことが一つの要因ではないだろうか。

「手」を借りるのではなく、「頭」を借りる

以前あるプロジェクトで、私が全体を指揮する立場となり、他数名のメンバーとともに検討を行ったことがある。当初私は、なるべく自分一人で考えて、タスクを作業ベースまで落とし込んでから、他メンバーに作業を分担した方が、メンバーも作業がしやすく、スムーズに検討が進むだろうと考えていた。
例えば、市場環境のリサーチを行う場合、まずはクイックにその市場の初期リサーチを行って、今後のトレンドや成長分野に関して仮説を構築してから、その仮説ベースで本格的なリサーチに進んでいくのが一般的だが、最も頭を使う仮説構築に関しては自分がやり、それに沿ったリサーチ作業を分担すべきだと考えていたのである。
しかし実際にやってみると、メンバーから出てくるアウトプットが、自分が意図したものと異なり、最終的には自分で作業を引き取ってしまうことも多かった。
そこで、頭を使って考える部分から、他メンバーにお願いし、頻繁に打ち合わせをしながら進めるようにしたところ、自分自身と他メンバーの思考のギャップが徐々に解消され、アウトプットのズレは格段に減った。メンバーの「手を借りる」から、「頭を借りる」というやり方にシフトしたことで、思考の「同期化」が進んだ結果だと思っている。

無責任なタスク分担はNG

一方で、無責任にタスクを丸投げして失敗しそうになったこともある。以前、私がマネージャーロールを任されていたプロジェクトで、とある市場の全体像を可視化し、そのプロジェクトにおいて検討対象とすべき商材・サービスは何なのかを明確にしなければいけない場面があった。私はメンバーに、その市場の分解の仕方から考えて、全体像を整理するように頼もうとしていた。それを上司に伝えたところ、「それは井田さんの考えるべきことなんじゃないの」と指摘され、やろうとしていたことの無責任さに気づいた。プロジェクトにおける検討対象の定義は、そのプロジェクト全体の行く末を大きく左右するものであって、絶対に間違えてはいけない部分であるからだ。自分で考えるべき部分はしっかりと考え、任せられる部分は最大限任せて、チームメンバー全員に頭を働かせてもらう。このバランスが、チームワークでは重要かつ、難しいことだと実感した。
これまで、コンサルタントとして働いてきて苦しかった時を振り返ってみると、一人で悩んでいたときが多かったように思う。M&Aや新規事業立案といったテーマの検討は、難題にぶつかることも多く、一人で考えても埒が明かない場面が多々あるが、そんなときに、チーム全員の思考を「同期化」し、チーム一丸となって検討を進めていけるよう、今後もトライしていきたい。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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