4.プリンシパル
印刷単価が高いことってそんなに偉いですか?
2021-02-05
コンサル業界の中では、単価の高さが美徳になっている
コンサル会社で、必ず経営指標とされているのがコンサルタントの月当たり単価だ。コンサル会社に所属しているコンサルタント個人でも、自分の月単価がいくらなのか気にしている人は多い。それは自分がいくらで請われているかを示すため、高ければ高いほど、そのコンサルタントの価値があるとみなされるからだ。会社において、自身の評価指標にも繋がるケースが多い。
私が、他の外資系コンサルティングファームの上層陣と意見交換したとき、「うちのチャージレートは高いよ」とドヤ顔で言われることもあった。チャージレートとは、1時間あたりのフィーだ。それを月換算すれば、月単価になる。彼が、どのような意図で言ったか推測すれば、おそらく、「うちのサービスは、クライアントから高い価値を認められているんだぞ、ブランド力があるんだぞ」ということだろう。
やはり、月単価が高ければ高いほど、業界において“すごいこと”という認識があるように思う。
ビジネスモデルの違いでも単価は違う
月単価と同時に考慮しなければならないのは、稼働率だ。年間どれぐらいプロジェクトにアサインされているのか。50%ならば、年間で正味6ヶ月アサインされていることになるし、100%ならば、年間ずっとアサインされていることになる。コンサル会社ごとに、目標とする稼働率が違うので、それによっても、月単価をいくらに設定するかは変わってくる。
例えば、そのコンサルタントに売上3,000万円稼いで欲しい場合は、稼働率50%想定ならば、月単価は500万円と設定しなければならないし、稼働率100%想定ならば、月単価は250万円と設定すればよい。
この稼働率は、各コンサル会社が提供しているサービス内容によっても変わる。ITコンサルであれば、比較的、長期間のプロジェクトが多いため、稼働率は高くなる。そして、月単価は安くなる。一方、戦略コンサルであれば、短期間のプロジェクトが多いため、稼働率は低く、月単価は高く設定される。なので、月単価の違いは、各コンサル会社のビジネスモデルの違いにも依るはずだ。
感覚として異常な単価設定をしている会社もある
ただし、そういうからくりを知った上でも、あまりに月単価が高いと違和感だ。クライアントからすれば、一時的に専門家を雇用する対価としてフィーを支払っているわけで、その観点から月単価を考えると、せいぜい500万円が限界だと個人的には思う。
仮に、事業会社でスーパーエリート人材を3,000万円の年収で雇う場合、人件費ベースにして、更に諸々のコストも加味すれば、1.5倍4,500万円程度のコストがかかる計算になる。それを12ヶ月で割ると、1ヶ月375万円だ。クライアントからすれば、これを固定費ではなく変動費として一時雇用できるので、その分プレミアムを載せたとしても500万円が限界だろう。
それに対して、上位ポジションに月単価1,000万円以上つけているコンサル会社もゴロゴロいる。外資系コンサルティングファームは特に多い。よく、「会議にパートナーがたまにしか来ないのに、すごい金額を請求される」というのは、そういう高単価過ぎるコンサルタントがアサインされているからだ。そして、そういうコンサルは、自分に価値があると思って、「単価が高いこと」をドヤ顔で言う。何故高いのか。それは会社の看板の力だったり、第3者としての権威付けだったり、そういう部分で合理化するしかない。
コストを抑え、低価格でサービス提供できるのが企業努力では
しかし、当たり前な話だが、クライアントにとって、コンサルティングフィーは安い方がいいに決まっている。そもそも、なぜそこまで単価を高くしなければいけないのか。理由は、コンサル会社のコスト構造にある。ピカピカのオフィスビルに入居し、高い採用マーケティングコストを払ってコンサルを採用し、大量のバックオフィスを抱え、それでいて、稼働率は6-7割程度。それならば、クライントに請求する単価に転嫁しないと、経営が成り立つわけがない。月単価が高いことは“美徳”というより、悪徳だ。クライアントへの価値に関係しないことは、コスト削減に徹し、品質を落とさないこと。加えて、効果的且つ効率的にプロジェクトを進め、安価で上質なサービスを提供すること。それこそが“美徳”ではないか。コンサル会社の経営努力とは、そこにあると思う。
MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴