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結果が全て

2024-03-08

結果が全て

「どうして、独立したのですか?」

ここ数ヶ月、中途採用の応募者が増えた。設立5年も経っていない会社に応募してくれるのだから、ありがたいものだ。面接で大手コンサル会社との違いに関する質問をよくされるが、「どうして、独立したのですか?」なんて質問もそれなりに受ける。「How are you?」と聞かれて、「I’m fine, thank you, and you?」が出てくるぐらいに、形式化してしまったやりとりではあるが、言い方は毎回同じではないにしても、「理想のコンサル会社を創りたかったから」という旨の答えをしている。
「どうして、独立したのですか?」と聞かれると、上述のような答えになってしまうのだが、「独立前と独立後で何が違いますか?」と聞かれると、答えの観点が違ってくる。一言で表すならば、「結果が全てであること」だと思う。

「独立前と独立後で何が違いますか?」

独立前、つまり、特定の会社に務める組織人のときは、いくら「結果にコミットします」と言ったって、本気で思ったって、結果に対する責任を全て負うわけではない。失敗したら、咎められるかもしれないし、降給・降格することもあるかもしれないが、それは社内における処遇であって、故意でも重過失でもない限り、賠償金を支払うことにもならないだろう。仕事に失敗したからといって、借金を背負わされるわけでもない。そして、成果主義の会社だって、全くプロセスを見ていないわけではない。
一方、独立してしまったら、自由な反面、全ての責任は自分にある。いくらきれいなプロセスを描いて仕事をしたところで、結果が伴わなければ「無」だ。「あんまり結果は出なかったけど、プロセスは良かったよね。よく頑張った」なんて言われることもない。考え方や、手法の妥当性に拘るべきコンサルタントの特性とは、全く真逆な部分が求められる。かといって、プロセスを全てすっ飛ばして、結果主義で、「稼げればいいんだろ」的精神で、仕事をしてしまうと、懐は潤っても、心は擦り切れてしまう。

理想と現実のバランス

「理想のコンサル会社を創りたかったから」に対して、現状、理想的になれているかと問われると、もちろんできている部分もあれども、まだまだ道半ばという印象だ。社会的意義とか、コンサルタントの意義とか、付加価値論とか、そういったものに拘りすぎると、きれいなプロセスだけ具備した実態のない会社になってしまうし、逆に、そういうのは度外視して収益至上主義に走ってしまうと、“理想”からどんどんかけ離れてしまう。この理想と現実のバランスがなかなか難しいなといつも思わされる。
でも、やはり、独立したら「結果が全て」の要素はあるので、しっかりと売上をつくって、従業員に十分な報酬を支払って、利益を残して、会社を存続させていかなければならない。ただ、会社として生きていくための一定以上の結果は担保しつつ、自分たちならではのプロセスにも拘りたいと思う。それがないと、独立した意味がないし、会社だったらなんでもいいことになってしまうからだ。そのためには、適正な売上水準というものがある気がする。稼ぎが少なくては当然困るが、稼ぎが多すぎても弊害が生じるのではないか。
会社として稼げていると、それが正しいという幻想に囚われそうだ。「もともと日銭稼ぎで始めた仕事なのに、なんか当たっちゃったし稼げているから、このまま続けよう」。人間は弱い生き物だから、そんな風に思ってしまいかねない。とても高尚なビジョンを掲げたスタートアップやベンチャーが、実態としてやっていることは、実はビジョンと全然違っていた。なんて話はよくあるものだ。ビジョン達成に向けた足がかりとしてやっていたことが、いつの間にか本業になってしまう現象。それで関係者が納得していてハッピーならば、外野がツベコベ言う必要はないが、そうはなりたくないなと思うので、うちは、必要以上に稼がないように気をつけたい。

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴

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