1.アナリスト
印刷ハリーポッターの舞台裏を見て
2026-02-13

スタジオツアーで見た「魔法の種明かし」
先日、ハリー・ポッター スタジオツアー東京に行った。
魔法省やダイアゴン横丁、生徒たちが食事を取る大広間など、ハリー・ポッターならではの世界観の再現も迫力があったが、個人的に最も興味を惹かれたのは、音響や映像の制作過程について解説されている “Behind the scenes” のコーナーだった。
まず、魔法界らしい音は、最初からそれっぽい音がどこかに存在しているわけではない。身近な物音を録音し、組み合わせ、少しずつ加工しながら「これだ」という音をつくり込んでいく。呪文ごとに、使われる場面や感情に合わせて音色が再現できるよう工夫されている。例えば、光の呪文ルーモスは、こっそり忍び込むときに使うため、不安や焦燥、静けさが織り込まれている。
次に、世界観に直接影響を与える映像は、現実とかけ離れていても決して「嘘っぽい」とは思わせないために、CGだけでなく実物のセットや仕掛けも巧みに織り込み、リアリティを追求している。特に衝撃を受けたのは、みんな大好きハグリッドだ。画面の中では生身の“半巨人”にしか見えないが、実際には表情やまばたきを細かく制御したアニマトロニクスを用いて撮影されており、あのビジュアルはほぼすべて作り物だという点だった。
このように、映画の中では一瞬で流れていく“魔法”の裏側には、膨大な試行錯誤と基本動作の積み重ねがある。
それを見ながら、「これはコンサルの現場でも似たことを感じたことがあるな」と思った。
先輩コンサルの魔法のような仕事の進め方
若手としてコンサル会社で働き始めた頃、上司のアウトプットは完全に魔法に見えた。
自分が半日〜1日かけてまとめたスライドが、上司の手に渡ると、短時間で意思決定に使えるストーリーと資料に変わる。
論点の整理、メッセージの言い切り方、図解の形、会議での話し方。どれを取っても、「なぜその形になるのか」がよく分からない。
外から見ていると、そこには「センス」や「才能」という言葉でしか説明できない何かがあるように感じてしまう。
しかし、制作現場のハリー・ポッターと同じで、裏側を見ると、実際にやっていることは地道な積み重ねだ。
情報を抜き出す、粒度をそろえる、グループに分ける、名前を付ける、順番を決める。
一つひとつは自分でもできる基本動作だが、その精度とスピード、組み合わせ方が圧倒的に違うだけなのだ、ということが少しずつ分かってきた。
魔法を魔法で終わらせない
コンサルの現場でも、ハリー・ポッターのスタジオツアーと同じように舞台裏を積極的に覗きに行くことで、学びの効率は大きく変わると思う。
例えば、上司がスライドを作り始める様子を隣で見せてもらったり、完成版になる前にプロジェクトペーパー上に描かれていたラフ案やボツ案も一緒に見せてもらったりすることだ。
要は、「どの情報を捨て、どこで分け、どこで言い切りに変えたのか」といった途中の判断と基本動作を見ることが重要なのだと思う。
若手としてできる一番の工夫は、上司のアウトプットを「魔法」として眺めて終わらせないことだ。
他にどんなパターンを考え、何を捨てたのか。なぜこの表現、このトーンに落ち着いたのか。
こうしたポイントを、その場で遠慮せずに聞いてしまう。
スタジオツアーで魔法の音づくりやアニマトロニクスの仕組みを見たときと同じように、上司や先輩の仕事を観察していく。
魔法のように見えるアウトプットがあること自体は悪いことではない。
ただ、その裏側を自分なりに分解し、「再現可能な技術」として盗めるかどうかで、数年後の差は大きくなると思う。
ハリー・ポッターの世界で言えば、呪文に感心しているだけか、自分で杖を握って練習しているかの違いだ。
コンサルの現場でも、上司の魔法を「すごいですね」で終わらせず、種明かしまで含めて自分の技術に変えていきたい。
MAVIS PARTNERS アナリスト 定永悠樹








