3.マネージャー

印刷

クライアントに“違和感”は問うものではない。察するものである

2025-03-21

クライアントに“違和感”は問うものではない。察するものである

クライアントにしない問い:“違和感はありますか?”

「なにか我々の検討成果に対し、違和感はありますか?」
コンサルタントが“問いかけてはいけない”と私が考えている質問だ。
コンサルタントは、論点に対し仮説を構築し、仮説を基にリサーチを行う。そしてリサーチで得たファクトを基に仮説をブラッシュアップし、最終的に仮説検証結果としてクライアントに報告する。その際、「我々のリサーチ結果に対し、実務を行っている立場から見て実態と異なると思うデータはありますか?」とか、「このリサーチ結果を見て、我々と異なる仮説を構築されましたか?」というような趣旨の問いかけをすることはある。だが、「この結果に違和感はありますか?」という質問だけはしないように心掛けている。なぜならば機能しないからだ。「なんかしっくりこない」というあいまいな回答が来ても扱いに困るし、「特に違和感はないです」と答えられてもウソかもしれない。また、「違和感はありますか?」という問い自体が、いつどんな時でも使えるので、クライアントに確認してもらいたいことを十分考えていない(要は会議設計が甘い)時に出てくる問いだとも思っている。

桑田佳祐が大切にする“違和感”

先日ある番組に桑田佳祐さんが出ていた際に、「楽曲作成をする際には、自分が感じる“違和感”を大切にしている」という趣旨の発言をされていた。例えば、名曲「真夏の果実」のレコーディング時には、もともと決まっていた歌詞をスタジオで曲に載せて歌ってみるとどうにもしっくりこなかったらしく、その場で歌詞の変更をしたらしい。
このエピソードを話しながら桑田さんは「自分が感じる違和感は絶対になくす。仮にスタッフがOKと言っても信じない。自分が感じる違和感を、同じように感じるリスナーがいた場合、その違和感はずっと残り続けるから。例えば、自分も、昔聞いたビートルズの曲で“ん?”と思った箇所は、今聞いても“ん?”と思う。」といったような話をしていた。この話には共感するものがあった。

クライアントに“違和感”は問わないが、しっくりしていない表情や雰囲気は察する

桑田さんの話とは次元が違うかもしれないが、コンサルタントも、いかに「“違和感”をなくし、自分自身の納得」を追求できるかどうかが勝負だと思っている。「自分はしっくりしてないけど、クライアントが納得しているからまあいいか」という状態を許せる人か、許せない人かがコンサルタントとして一人前になれるか否かの分岐点であるように思う。
クライアントに“違和感がありますか?”と問うことはしなくとも、私自身が感じる違和感は大切にしている。今でも、リサーチャーが調べてくれた内容に少しでも気になる箇所があれば自分で調べていて、その時にリサーチ結果の誤りを見つける場合も少なくない。これを「まあちょっと気になる結果ではあるが、リサーチャーが時間をかけて調べたものだから正しいだろう」と受け入れてしまうと間違った結果を導き出してしまうこともある。
リサーチ結果の場合はわかりやすいが、「自分で報告ストーリー全体を考えたがなんだかしっくりこない」というようなケースもある。その場合も、自分が何に違和感を持っているのかが分かるまで考える。絶対に無視はしない。

自分が引っかかる“違和感”は解消するまで終わらない

もちろん、“自分自身の違和感”だけではなく、クライアントが違和感を持っていそうなそぶりを見せたらそれも無視せずに解消するよう努める。冒頭、「違和感はありませんか?」という問いかけは機能しないから使わないと言ったが、そんな問いかけをしなくとも、違和感を持っている人は表情やしぐさ、受け答えの間や、声のトーンに現れる。その時表面上「違和感ありません」と言われたとしても、「あの顔をしていたから、どこか納得していないはずだ」と考えて、その理由を考え抜く。もちろん理由を直接聞くこともあるが、クライアント自身も何に納得できていないのかよく理解できていないケースもある。その時に、クライアントの立場に立って「なぜあの人はあの時あんな反応をしたのか?」を深く考えることができるか否かが満足度につながると思う。MAVISはそんな“クライアントの違和感”に寄り添える集団でありながら、「違和感はありますか?」という野暮な質問はしないスマートさも兼ね備えた集団でありたいとも思う。

MAVIS PARTNERS マネージャー 渡邊悠太

Contact

お気軽にお問い合わせください

お問い合わせフォーム