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量が大事か、質が大事か?

2024-09-27

量が大事か、質が大事か?

守破離から考える量・質議論

若手の育成において、「量が大事か、質が大事か」という議論はたびたび交わされる。「とにかく量をこなすことで質が生まれる」という主張がある一方、「質を重視してむやみに量を追わないべきだ」という意見もある。私の考えでは、量と質は相互に作用するものであり、どちらか一方を軽視してはならないと考える。
まず、「量が質に転換する」という考え方は非常に重要だ。初学者が初めから質を高めることはできないはずだ。たとえば、ピアノを始めたばかりの人が「きれいな音を出すにはどうすればいいか」と細部にこだわったとしても、基本的な指使いができていなければ意味を成さない。最初は、同じ曲を繰り返し弾くことで、指使いやリズム感が体に染みついていくのだろう。スポーツにおいても同様で、バスケットボールのシュートを正確にするには、ひたすらシュートを繰り返して体に動きを覚えさせるのが大事だと言われることが多い。
以前、私が言及した「守破離」の考え方からも「量が質に転換する」過程を説明できる。「守」の段階では型を身につけることが目的であり、型に慣れるためには大量の経験を積むことが必要である。料理人が包丁の扱いや下ごしらえの基本を何度も繰り返し練習するように、正しい動作や思考を反復することで、型が身につく。この段階では、細かな質の追求よりも「いかに多くの経験を積むか」が重要となる。

守破離の「守」の段階では型を守ることが重要

守破離の「守」の段階では、まず正しい型を守ることが重要である。誰かが作り上げた型や方法を繰り返し練習することで、それを自分のスキルとして定着させることが目的である。たとえば、算数の学習を考えてみるとよい。誰もが初めて学ぶ際に「1+1=2」を証明しようとはしない。公式を覚え、ドリルを解き、問題を解くことで計算のスキルが自然と身についていく。公式を自ら発明し直す必要はないし、そうすることで時間を無駄にするよりも、既存の型を使って応用問題を解いた方が効率的な場合が多い。
このように、最初の段階では独自の創造性を発揮するよりも「まずは覚える」という姿勢が求められる。たとえばタイピングの練習も同様で、正しい指の配置を知らずに自己流で練習を続けると、効率的な上達は期待できない。まず正しい配置を学び、その型に従って何度もキーを打つことで、速くて正確なタイピングが可能となる。正しい型を守ることで、次のステップである「破」や「離」への成長がスムーズに進むのである。

「質を意識した練習」によって効果的に正しい型を習得できる

量をこなすことは重要であるが、正しい型を身に着けるには、その中で「質を意識した練習」を行うことも必要である。同じことをただ繰り返すのではなく、振り返りをし、何がうまくいっているのか、どこに課題があるのかを確認することが質を高めるポイントとなる。たとえば、英語のスピーキング練習では、ただ英語を話すだけでなく、自分の発音や表現に問題がないか録音して聞き返すことで、次に話す際に改善点を見つけることができる。
また、スポーツの例を挙げると、野球のバッティング練習も同じである。何百回とバットを振るのはもちろん大切だが、その際に正しいフォームを意識してスイングすることで、練習の効果が高まる。フォームが崩れたまま繰り返しスイングしても、正しい動きを身につけることはできない。逆に、短時間でも正しいフォームを意識して練習することで、早く質の高いプレーができるようになるだろう。
このように、型を習得するための練習量を十分に確保しながらも、その中で質を意識した工夫や振り返りを行うことで、正確な型の素早い習得が可能となる。最終的には、自分の経験を通して質を高めていく段階へと進んでいくことが目標である。量と質のどちらが大切かという議論ではなく、まずは量を積み、その中で質を意識することで、より効果的な成長を実現することができるはずだ、という考え方である。

MAVIS PARTNERS アナリスト 松村寿明

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