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どんな問いを立てるか

2023-09-01

どんな問いを立てるか

「答え」を出す仕事の重要性の低下

昨今、「AIによって代替される仕事は何か?」といった文脈の記事やレポートを目にする機会が多く、自分の仕事って10年後20年後に存在しているのだろうか?と不安になる人も多いと思う。私もその一人である。
2020年にリクルートワークスが行った調査で、「全国就業状態パネル調査2020」というものがあり、その中では、AIによって代替されやすい職とそうでない職を分類しており、AIに代替されやすい仕事の中に、「財務、会計、経理」、「公認会計士、税理士」、「薬剤師」といった職が含まれている。
上記の結果の解釈は人それぞれだと思うが、たとえ専門性が高かったとしても、「答え」を出す仕事というのは、今後どんどん縮小していくのではないかと感じた。
AIが持つ知識量は、人間ではとても太刀打ちできず、「答え」を出すという領域において人間に勝ち目は無い。このことは、我々コンサルタントにとっても他人事では無いなと思った。

「答え」より「問い」

元博報堂で、株式会社GOを立ち上げ、若手ビジネスマンから支持されている三浦祟宏さんは、とあるイベントでこう述べている。「答えは飽和しているが、問いが不足している」。
たしかに、これだけChatGPT等の生成AIが発達している現状をみると、「答え」を作るのはそこまで重要ではないというのも、納得が出来る。一方で、AIは黙っていても「問い」は作ってくれないので、そこが今後人間が担うべき仕事なのだと。
我々コンサルタントも、普段リサーチや分析といった仕事をする中で、常に「問い」が起点になっているし、そうでなければいけないと考えている。明確な「問い」が無いままに、ただ情報を漁ったりデータをいじったりしていても、泥沼にハマってしまい、結局何がしたかったか分からなくなるという経験は何度もしている。リサーチや分析の目的に立ち返り、”良い問い”を立てることさえできれば、あとは調べるだけなので、仕事は半分以上終わったものだともいえる。

「問い」を投げても簡単に答えられない・答えたくないのが人間

一方で、対人でコミュニケーションを取りながら「問い」に対して解をだしていく仕事においては、”問い方”もとても大事になる。
最近、とある地方都市で行政書士を個人でやっている方と話す機会があった。そこで面白いエピソードを聞かせてもらった。「この前、とある中小企業の社長さんと企業理念について話す機会があったのだが、最初「御社の企業理念は何ですか?」と聞いても反応が良くなかったが、「御社の”魂”は何ですか?」と聞いたら沢山のことを語ってくれた」というのである。
当然だが、問いかける相手の気持ちや置かれている状況によって、同じ問いかけをしても、求めている答えが返ってくるかどうかは違う。上の例でいえば、社長さんもきっと「企業理念」という言葉自体は知っているけど、それを言語化できないから困っているのであって、そのまま聞いても意味が無かったということなのだと思っている。一方で、「企業理念」を「魂」と言い換えることによって、「自分は本当は何がやりたかったのか?」を振り返ることが出来たのではないだろうか。
自分も、普段コンサル同士で使っているような言葉を使ってクライアントに問いかけたときに微妙な反応をされた経験はあるので、たしかにそうだなと反省した。

「問い」を武器に人間にしか出来ない仕事をしていきたい

自らの仕事を振り返ってみると、例えばクライアントとの議論でファシリテーションをする際にも、うまく「問い」を立てられているか否かで、議論成果は大きく変わってくるなと思う。”良い問い”とは、「答えて意味がある」かつ「答えられる」ことが必要だが、「答えられる」問いを立てるためには、独りよがりにならず、相手の置かれている状況や心情をしっかりと考えないといけないなと再認識した。
AIがどんどん発達している世の中にあっても、一人の人間として必要とされる存在で有り続けるためにも、「問い」を自分の武器として使っていけるようになっていきたい。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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