4.プリンシパル

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驕ると終わる

2022-03-25

驕ると終わる

やればやるほど遠く

スポーツでも芸術でも何でもそうだと思うが、ちょっと上達してくると、これまで見えてこなかった自分の粗に気づいたり、もっと上手くできる余地を見出してしまったり、そもそも全く足りていないスキルに気づいたり、いくらやっても、“究める”ということに終わりが全く見えない。
それは、コンサル業でも同じだ。入社してすぐは右も左も分からず、先輩の背中を真似て乗り切り、数年経って、ちょっと慣れてきたかなと思えば、いかに自分が先輩のようにできないかを思い知らされる。更に経験を積むと、マネージャーみたいな立場になり、下に若手を率いることになるが、ちゃんとプロジェクトがゴールに着地するのか不安で仕方ない。ただ、プロジェクトも、それなりの数を経験すると、マネージャーとしての自負も出てくる。でも今度は、ずっとこんな体力勝負のやり方でいいのか不安になる。それでもなんとか続けていると、いつの間にか、おおよそのプロジェクトであれば、自分のスタイルで狙ったゴールに導けるようになる。「やった、これで一人前だ」、そんなことを思っていると、上から「営業が出来て本当の1人前だから」なんて言われて、しょぼくれる。確かに、1人でゼロから案件を獲ったことなんてない。どうしたらいいんだ……。大体これが業界だと、シニアマネージャーぐらいのポジションだろう。
こんなことが続くものだから、道半ばでコンサルをリタイアする人は非常に多い。やればやるほど先が遠く見える。ただ、それが分かって、別の道を模索するというリタイアならば健全。中には、「自分はもうコンサルは出来るから」なんて勘違いして業界を去る人もいるし、そういうタイプが「コンサルは虚業だ」なんて言ったりするもんだから、しょうもない。

スキルよりメンタル

偉そうな書き方をしてしまったかもしれないが、私ももちろん道半ばです。日々足りないことに気付かされるし、もっと上手くできたんじゃないかと反省しない日は無い。いくら経験しても、プロジェクトに対しての既視感は薄い。似たようなテーマやったことあるなぁなんて思えるのは、半分あればいい方。残り半分は真新しく感じる。「類似性」をどう考えるか次第でもあるが、いくらテーマが過去の経験と似ていたとしても、そのクライアントにとっての文脈が違うことがほとんどだし、クライントが違えば、大事にしていることも違うので、プロジェクトの進め方は変えなければならない。そうなると、毎回が新しい。そして、私の場合は業界特化しているわけではないので、テーマが似ていても、クライアントの業界が違えば、その部分はゼロから勉強が必要になる。
なので、そもそもスキルや知識面で、「コンサルとして一人前」なんて状況は一生訪れるわけがないのだ。それに気づいたときには、既に経験年数もまぁまぁいっていたので、「あぁ、職業選択を間違えたかな」なんて絶望感を感じたこともあったが、今では、そういう職業なんだと割り切っている。ただ割り切るだけではない。スキルや知識面で究めることが無理ならば、少なくともメンタルでは超一流を目指そうと思った。心構えだったり、考えることに対する姿勢だったり、スキルが未熟でも、メンタル面なら、気持ちの置き方で誰でもプロフェッショナルになれる。逆に、そこが堅持できないと、この仕事は続かないだろうと思う。

すべては相対的

私はコンサル業というのは、相対的なものだと思っている。絶対的なスキルや知識を持った人間が、「ああすべし」「こうすべし」と、クライアントに提言して回るような仕事ではなく、そのクライアントに足りないものを補強する役目がコンサルタントだと思う。なので、やりたいことを自社だけできるような企業、コンサルタントが必要ない企業があるのは当然で、それに越したことはないだろう。ただ中には、新しいことに挑戦したいが、自分たちだけじゃやれない、やりにくいことがある企業がいるのも事実。そういう企業に、自分が役立つ余地があるならば、コンサルティングというサービスを提供したいと思うし、そうじゃないなら、私なんて必要とされるわけはない。あくまでも、相対的に自分が役立てるかどうか。そこさえ忘れなければ、プロフェッショナルとして持続的な成長は必要なものの、いつまで経っても究められないことを嘆く必要はない。
スキルが完結することはないけど、メンタルは高尚に。成長は必須だけれども、コンサルティングは相対的なものだから、自分が役立てる企業が1社でもあればいい。それでコンサル業は成り立つ。驕らずに愚直に前向きにクライアントワークしましょう。

(4月からコンサル業界に入ってくる方向けに書いてみました。ようこそコンサル業界へ!)

MAVIS PARTNERS プリンシパル 田中大貴

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