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ファクトに責任を持つ

2024-09-20

ファクトに責任を持つ

今日、袴田事件の再審判決

2024年9月26日午後2時から、1966年に静岡県で4人家族が殺害された強盗放火殺人事件(通称:袴田事件)の再審判決の言い渡しが行われる(本コラム執筆当時は判決が出る前)。
この事件では、元プロボクサーの袴田巌さんが逮捕・起訴され、1980年に死刑判決が確定している。しかし、その後検察側が示した証拠が捏造されたものである可能性が指摘され、2014年に再審開始が決定されている。報道によれば、今日の判決で無罪が言い渡される公算が大きいということだ。
再審における最大の争点は、「証拠として検察が提示した赤い血痕の付いた衣類は本当に犯行に使われたものなのか?」だ。この衣類は、事件から1年後に味噌工場の味噌タンクの中から見つかっており、弁護側は「1年も味噌に浸かっていれば赤みが残っていることは化学的にあり得ない」としており、検察による捏造の可能性が高いとされている。
他にも検察が提示した証拠の中で、袴田さんの自宅から出てきた微量の血痕の付いた衣類が、事件後に検察が用意したものである可能性が高い等、捏造の可能性が高いものが出てきているとのこと。
逮捕・起訴から42年間拘置所に収監(2014年に仮釈放されている)され、現在は88歳になる袴田さん本人のことを考えると、もし無罪判決が出るのであれば、本当に色々と考えさせられる。

ファクトがファクトじゃ無かった瞬間にすべて崩れる

我々コンサルの仕事は、ファクトとロジックで勝負するというのが大原則である。そのため、プロジェクト初期の段階で、様々なリサーチを行い、まずはファクトを把握した上で、そのファクトをベースに検討を進めていくことが多い。そのため、ファクトが実は事実ではなかったともなれば、それは大事であることは言うまでも無い。
例えば、アンケート結果等のデータの集計結果をベースに議論していく際には、集計段階のExcel上の操作や関数にミスは無いか?に細心の注意を払っている。しかし、そもそも参照しているデータ自体が誤ったものであったら、どれだけ加工段階で頑張っても意味がない。
そのため、外部の調査レポート等の第三者が行った調査結果を鵜呑みにすることなく、自らが調査主体となることが重要だといえる。MAVISでも、できる限り自ら手や足を動かして調査を行い、泥臭く1次情報を取りに行くようにしている。
しかし現実問題として、時間の制約等から第三者のレポートを参照せざるを得ないケースもあり、その際には、その調査の手段や規模等の詳細を問い合わせ、結果の信憑性を確かめるようにしている。

ファクトに責任を持つ

これはコンサルに限らずだと思うが、リサーチ作業やデータ分析の作業は、一般的に比較的若手ポジションのメンバーが主体となって行うことが多い。しかし、上で述べたように、このファクトを揃える段階の作業が非常に重要であり、その後の検討の成否を左右することを考えると、検討の責任者レベルであっても、出てきたファクトに対してはしっかりと目を通して、事実として認識して良いものか確認をする必要があると思う。
私自身、プロジェクトマネージャーとして検討をリードしていくときに、メンバーにリサーチやデータ分析を依頼することはあるが、リサーチ手順や、Excelの操作方法に至るまで、細かにチェックして、絶対にミスを起こさないようにしないといけないと改めて思う。
最初に述べた袴田事件ほどでは無いが、間違った情報をベースに検討を進めると、多くの人の人生を狂わせる結果になりかねない。自分が示した情報が誤っていたために、経営判断にミスが生じてしまったというようなことが今後起こらないように、「ファクトに対して責任を持つ」ということを肝に銘じたい。

MAVIS PARTNERS アソシエイト 井田倫宏

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