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今世は剥き出しの自己責任社会

2024-08-30

今世は剥き出しの自己責任社会

「今の時代は、若い子には酷」

元プロ野球選手・イチロー氏は近年、日本全国の高校野球部でスポット的に指導を行っていることが知られている。そのイチロー氏が先日、訪れた高校で以下のような発言をしたことが大きな話題になっていた。
〈「今の時代、指導する側が厳しくできなくなって。何年くらいなるかな。僕が初めて高校野球の指導にいったのが2020年の秋、智弁和歌山だね。このとき既に智弁の中谷監督もそんなこと言ってた。なかなか難しい、厳しくするのはと。でもめちゃくちゃ智弁は厳しいけど。これは酷なことなのよ。高校生たちに自分たちに厳しくして自分たちでうまくなれって、酷なことなんだけど、でも今そうなっちゃっているからね。(中略)でも自分たちで厳しくするしかないんですよ。ある時代まではね、遊んでいても勝手に監督・コーチが厳しいから全然できないやつがあるところまでは上がってこられた。やんなきゃしょうがなくなるからね。でも、今は全然できない子は上げてもらえないから。上がってこられなくなっちゃう。それ自分でやらなきゃ。なかなかこれは大変」と様変わりした現代では、選手がより自身を律することが求められる過酷さを指摘した〉(2023年11月6日、スポニチアネックス【イチロー氏 「指導する側が厳しくできない」時代の流れ 「酷だけれど…自分たちで厳しくするしか」】より引用:原文ママ)

誰も叱ってくれない、剥き出しの自己責任

イチロー氏の発言は大変興味深い。昭和の頃は厳しい大人が身の回りに多くいて、まるで自分ごとのように叱ってくれる大人が近くにいたということだ。「厳しい大人」というのは、若者を「一定のラインまで引き上げる」ことを、責任をもって保証してくれる人でもあった。その指導やフィードバックが厳しくても辛くてもしんどくても、とりあえず信じてついていけば、ある程度の高みにまでは自分を運んでくれる、そういう指導責任を頼もしく引き受けてくれる人でもあったのだ。時には暴力を伴うものであったかもしれない。それを肯定するというわけではないし、むしろ私も殴られたいわけではない。(というか絶対殴られたくない。)しかし自分で自分を律することのできない人も、かつてはその厳しい大人のおかげでなんとか成長できたということだ。
一方で今の時代はどうか。自分に厳しくできない人は、どのようにして成長の機会を得るのか。いまの時代は「厳しい大人」という存在を、加害的であり、抑圧したり心の傷を負ったりする原因となってしまうリスクがあるということで排除してきた。それによって、たしかに理不尽やトラウマを味わう機会がめっぽう減ったことは間違いないが、かつてそういう人たちによって保証されていた「高み」に上がって来られるかどうかは、完全に「自己責任」になってしまった。自分で自分を厳しく管理して、「高み」にまで自分を押し上げられる若者はそう多くはない。結果として世の中は二極化が著しくなっている。勝ち組はライバルが減った分だけその取り分が大きくなったが、負け組になると、負け組になってしまったのは自分の自主性の結果なので救済の論理はなく、あっさり「自己責任」として突き放される。結局のところ、今の時代、自分のことは自分でなんとかするしかないのだ。自堕落さや怠け癖をしばいてくれる人は周りから消え、今世は剥き出しの自己責任社会であり、自分で自分を律することのできる者しか成功できない。そのことをイチロー氏は「若い子には酷な時代だ」と表現しているのである。

MAVIS はしっかり育ててくれます

MAVISに入社してから1ヶ月が経った。この1ヶ月を経て感じたことは、この会社は自身のいいところも改善しなければならないところも全て含めて、しっかりとフィードバックしてくれる体制・風土が整っているということだ。定例会後は必ず振り返りの時間を設け、上司をはじめ社長まで参加してくれ、良かったところ、改善すべきところ、そして次はどのようにすべきかをきめ細かく振り返る。プロジェクトのはじめと終わりには、「ピカンテ」と社内で呼ばれる目標管理シートがある。このプロジェクトを通じて自身がどんなことを果たさなければならないか、プロジェクト参画前に目標を立て、終了後に振り返るというものだ。時には厳しくフィードバックをもらうこともあるが、それはあくまで自分自身の成長を願ってのものであると納得する内容ばかりである。私はこの剥き出しの自己責任の世の中において「厳しい大人」に出会うことができたのだ。
自分で自分を律することのできない者は自分でなんとかするしかない、そんな自己責任の世の中ではあるが、部下の面倒をしっかりと自分事として見てくれる会社に巡り会えて自分は本当に幸運な人間だと思う。一人でも多くの方が、私のように現代版の「厳しい大人」に巡り会えることを心より祈っている。

MAVIS PARTNERS アナリスト 大橋建太

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